【3月18日 AFP】早期の医学的介入が後天性免疫不全症候群(AIDS、エイズ)の「機能的完治」につながる可能性があることを示す小規模な研究が、14日発行の米医学誌『PLoS Pathogens』に掲載された。研究は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した人で薬物治療を中断して以降も健康を維持しているフランス在住の14人を対象に行われた。

 2週間前にも、米ミシシッピ(Mississippi)州の新生児に生後30時間以内から複数の抗エイズ薬を混合したカクテル薬の投与を始め、積極的治療を行ったところ、「機能的完治」に至ったとの報告がなされている。

 専門家らは、これら2つの研究に示される類似点が興味深いものであることに同意する一方で、こうした事例は非常にまれであることを指摘、世界に約3400万人いるHIV感染者の大半は、薬物治療をやめてしまえばAIDSを発症するだろうと警告している。

 著名なHIV研究者で米ノースカロライナ(University of North Carolina)大学感染症センター(Center for Infectious Diseases)のマイロン・コーエン(Myron Cohen)所長はAFPに対し、フランスでの研究について、「早期治療でいったいなぜ完治するというのか。彼らの研究はいくつかの手がかりを示してはくれたが、この疑問の解決にはもっと科学が必要だ」と述べた。

■エイズ発症しない理由は不明

 今回の研究で調査対象となった成人14人は、感染から10週間以内に複数の抗レトロウイルス薬による治療を開始していた。薬物治療の時期は、平均で約3年。治療中断後も、平均7.5年にわたってウイルス負荷を一定に維持している。

 ただし、これらの患者はHIVをコントロールできているにすぎず、体内から完全にウィルスが排除されたわけではない。細胞内に低い水準でHIVを維持する一方、エイズは発症していないという状態だ。

 研究者らは、なぜこれらの患者が投薬治療なしでHIVと戦うことができるのか、それを説明するメカニズムはいまだ不明であることに注意を促している。いくつかの免疫検査を行ったものの、明確な理由は判明していない。

 14人は全員フランス在住で、現在の年齢は34~66歳。感染時期は1990年代から2000年代だった。薬物治療の終了後もHIVをコントロールできているようだと確認された後で調査対象に選ばれていることから、こうした人たちが人口に占める割合がどの程度であるかも不明だ。

 なお、これら14人に関する予備調査の結果は、昨年米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開催された国際エイズ会議(International AIDS Conference)で発表されており、その後も継続調査が行われていた。(c)AFP/Kerry Sheridan