【2月7日 AFP】食事療法に安価な抗生物質を加えることで、急性栄養失調の子供たちの多くを救えるかもしれない――1月31日発行の米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に米ワシントン大学(Washington University)医学部が研究結果を発表した。

 この調査は、アフリカ南東部マラウイ共和国の生後6か月から5歳の子供のうち、重度の栄養失調と診断された約2700人を対象に行ったもの。まず子供たち全員に、同国のような貧困国での食事療法として一般的なピーナツ主体の高栄養サプリメントの投与を行った。

 このサプリメント投与に加えて、さらに対象を無作為に三つのグループに分け、それぞれに抗生物質のアモキシシリン、セフジニル、偽薬を7日間にわたって投与した。その間、家族や研究者には、どの子供にどの錠剤を与えているかは明らかにされなかった。

 この結果、抗生物質を与えたか否かにかかわらず、食事療法(サプリメント投与)は大半の子供に有効で、いずれのグループでも85%以上の子供に症状の回復がみられた。ただし、抗生物質を与えたグループの回復率の方が、偽薬のみのグループを大幅に上回った。

 言い換えれば、偽薬投与のグループと比べて抗生物質を与えたグループでは、回復がみられない子供の割合は、アモキシシリン投与が約25%、セフジニル投与が約40%低かった。 また死亡率も抗生物質を投与したグループの方が低く、アモキシシリンでは約30%、セフジニルでは約45%、偽薬摂取のグループを下回った。

 調査を行った研究者らは米紙ニューヨークタイムズ(New York Times)に対し、この臨床試験の結果は栄養失調の治療方法を変えるかもしれないと話している。世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は近く、外来の栄養失調患者の治療方法に関する新たな指針を発表する予定で、今回の研究結果を受けて、より幅広い抗生物質の利用を勧めることにしたという。

 一方、1月30日発行の「USジャーナルサイエンス(US Journal Science)」誌に発表された別の研究結果では、重度の栄養失調を起こした子供の中には、不十分な食事、あるいは栄養価の低い食事が原因ではない場合もあることが示された。

 同じくマラウイでワシントン大学のチームが行ったこの研究では、特に双子の一方だけが栄養失調の一形態、「クワシオルコル」を発症した場合に着目し、約400組の双子を出生時から3歳まで追跡調査した。その結果、子供が腸内に持つ細菌の違いが、栄養失調の程度に影響していることが示された。クワシオルコルは腹部膨満や肝障害、皮膚潰瘍の形成、食欲減退、衰弱といった症状を伴う。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、世界では3.6秒に1人が餓死しており、その大半は5歳以下の子供だ。ユニセフはウェブサイトで、「世界の飢餓人口のうち、約3億人を子供が占めている。飢饉やその他の緊急事態によって飢餓に陥っている子供の割合は、そのうちわずか8%にすぎない。飢餓の子供の90%以上が、長期的な栄養失調、または微量栄養素欠乏に苦しんでいる」と指摘している。(c)AFP