肥満は世界的な「流行病」、ダボス会議で専門家が警鐘
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【1月28日 AFP】今や肥満は世界的な「流行病」であり、今後の20年で世界の成人人口の半数以上が肥満となる可能性がある――専門家たちが警鐘を鳴らした。スイス東部ダボス(Davos)で開催中の世界経済フォーラム(World Economic Forum、WEF)年次総会(ダボス会議)で27日、健康問題に関する会議が行われ、専門家たちは肥満の人たちに意志力が欠如していると批判するばかりでなく緊急の対策が必要だと呼びかけた。
会議には健康、栄養、体調管理などの専門家らが出席。死にもつながる肥満の危険性は増加しており、各国の政治家は、かつて喫煙問題で見せたような決意を持って肥満の問題に取り組む必要があると訴えた。
さらに専門家たちは、不健康な食品は増加の一途をたどり、座りっぱなしの生活が増えるなか、世界で毎年280万人の命を奪っている糖尿病や心臓病の増加という危機に対応するための答えが求められていると指摘した。
米コロンビア大学(Columbia University)メールマン公衆衛生学部(Mailman School of Public Health)のリンダ・フリード(Linda Fried)学部長は、すでに世界の成人の14億人が肥満だが、この人数は増加すると警告。フリード学部長によれば、現在の状況がこのまま続けば、今後の20年で肥満の人の数は世界の成人人口の50~60%に達するという。
「仮に肥満が感染症だとしたら、『世界的流行』と呼べる状況にある。肥満は特定の地域ではなく世界的に見られ、しかも急速に増え続けているからだ」(フリード学部長)
専門家らによれば、この危機状況を解決するための第一歩は、多くの人が示す本能的な反応――周囲の環境ではなく肥満そのものを批判すること――をやめることだ。
「世界人口に占める過体重または肥満の人の割合は30年間で倍増した。しかし(同じ時期に)世界全体で人々が意志力を失ったなどと示す証拠はない」(フリード学部長)
■背景に「運動不足の危機」
意志力の欠如に代わって専門家らが非難するのは、入手が容易で比較的安価な高カロリー食品と、生活スタイルでの運動量減少につながる都市化の進行だ。
米スポーツ用品大手ナイキ(NIKE)のリサ・マッカラム・カーター(Lisa MacCallum Carter)スポーツ・アクセス担当副社長は、肥満は都市化による「運動不足の危機」に関連していると話す。例えば、職場では同僚と会話する時は立ち上がって同僚の席まで歩いていったものが、今では電子メールですませるなど、偶発的な動きによる日常の運動量が大幅に減少したというのだ。
カーター氏は、現在の米国人は1967年と比較して運動量が32%減っており、この傾向が続けば2030年までに運動量はさらに50%減少するとの研究結果を紹介。中国人では半世代で45%も運動量が減少したという。
同時に専門家らは、日常的に口にする食品で脂肪や塩分、製造や流通を容易にするための人工添加物などの含有量が増え、より不健康になっていると指摘している。
栄養向上のためのグローバル同盟(Global Alliance for Improved Nutrition、GAIN)のマーク・バン・アメリンジェン(Marc Van Ameringen)事務局長は、「市場は非常に急速に、こうした傾向を強めている」との見方を示した。
■食品企業ばかりが悪いのか
一方、スイスの食品大手ネスレ(Nestle)のポール・ブルケ(Paul Bulcke)最高経営責任者(CEO)は、食品会社が必要以上に悪者にされていると話す。「これは非常に複雑な問題だ。確かに私たちは攻撃されている。だが、それは私たちを批判したがる一部社会が、そうしている側面もややある」
さらにブルケ氏は、ネスレは自社製品に「意義あるラベル表示」を導入しており、栄養教育を促進する責任は各国政府の側にあると訴えた。
同様に、カーター氏も体を動かす量を日常生活のなかで再び増やすための努力が不可欠だと主張する。「栄養の面では非常に高度な研究がなされる一方、運動不足の危機に関しては、何の問題解決もなされていない」
この他にも、専門家たちは子どもたちにスポーツをさせる必要性を強調。身体活動を増やすためには、個人、企業、政府が協力しあうことが必要だとし、一例として歩く機会が増えるような都市空間の再設計を挙げた。
フリード学部長は、肥満の問題は健康に関する緊急事態であるとともに国際的かつ膨大な側面を抱えた問題であり、皆が共に取り組むことでしか解決はないと訴えた。(c)AFP/Michael Mainville
会議には健康、栄養、体調管理などの専門家らが出席。死にもつながる肥満の危険性は増加しており、各国の政治家は、かつて喫煙問題で見せたような決意を持って肥満の問題に取り組む必要があると訴えた。
さらに専門家たちは、不健康な食品は増加の一途をたどり、座りっぱなしの生活が増えるなか、世界で毎年280万人の命を奪っている糖尿病や心臓病の増加という危機に対応するための答えが求められていると指摘した。
米コロンビア大学(Columbia University)メールマン公衆衛生学部(Mailman School of Public Health)のリンダ・フリード(Linda Fried)学部長は、すでに世界の成人の14億人が肥満だが、この人数は増加すると警告。フリード学部長によれば、現在の状況がこのまま続けば、今後の20年で肥満の人の数は世界の成人人口の50~60%に達するという。
「仮に肥満が感染症だとしたら、『世界的流行』と呼べる状況にある。肥満は特定の地域ではなく世界的に見られ、しかも急速に増え続けているからだ」(フリード学部長)
専門家らによれば、この危機状況を解決するための第一歩は、多くの人が示す本能的な反応――周囲の環境ではなく肥満そのものを批判すること――をやめることだ。
「世界人口に占める過体重または肥満の人の割合は30年間で倍増した。しかし(同じ時期に)世界全体で人々が意志力を失ったなどと示す証拠はない」(フリード学部長)
■背景に「運動不足の危機」
意志力の欠如に代わって専門家らが非難するのは、入手が容易で比較的安価な高カロリー食品と、生活スタイルでの運動量減少につながる都市化の進行だ。
米スポーツ用品大手ナイキ(NIKE)のリサ・マッカラム・カーター(Lisa MacCallum Carter)スポーツ・アクセス担当副社長は、肥満は都市化による「運動不足の危機」に関連していると話す。例えば、職場では同僚と会話する時は立ち上がって同僚の席まで歩いていったものが、今では電子メールですませるなど、偶発的な動きによる日常の運動量が大幅に減少したというのだ。
カーター氏は、現在の米国人は1967年と比較して運動量が32%減っており、この傾向が続けば2030年までに運動量はさらに50%減少するとの研究結果を紹介。中国人では半世代で45%も運動量が減少したという。
同時に専門家らは、日常的に口にする食品で脂肪や塩分、製造や流通を容易にするための人工添加物などの含有量が増え、より不健康になっていると指摘している。
栄養向上のためのグローバル同盟(Global Alliance for Improved Nutrition、GAIN)のマーク・バン・アメリンジェン(Marc Van Ameringen)事務局長は、「市場は非常に急速に、こうした傾向を強めている」との見方を示した。
■食品企業ばかりが悪いのか
一方、スイスの食品大手ネスレ(Nestle)のポール・ブルケ(Paul Bulcke)最高経営責任者(CEO)は、食品会社が必要以上に悪者にされていると話す。「これは非常に複雑な問題だ。確かに私たちは攻撃されている。だが、それは私たちを批判したがる一部社会が、そうしている側面もややある」
さらにブルケ氏は、ネスレは自社製品に「意義あるラベル表示」を導入しており、栄養教育を促進する責任は各国政府の側にあると訴えた。
同様に、カーター氏も体を動かす量を日常生活のなかで再び増やすための努力が不可欠だと主張する。「栄養の面では非常に高度な研究がなされる一方、運動不足の危機に関しては、何の問題解決もなされていない」
この他にも、専門家たちは子どもたちにスポーツをさせる必要性を強調。身体活動を増やすためには、個人、企業、政府が協力しあうことが必要だとし、一例として歩く機会が増えるような都市空間の再設計を挙げた。
フリード学部長は、肥満の問題は健康に関する緊急事態であるとともに国際的かつ膨大な側面を抱えた問題であり、皆が共に取り組むことでしか解決はないと訴えた。(c)AFP/Michael Mainville