【1月22日 AFP】肥満の人は自動車衝突事故での死亡率が標準体重の人と比べてはるかに高く、最も肥満度の高いグループの死亡率は1.8倍にも上るとする論文が、21日に国際医学誌「エマージェンシー・メディシン・ジャーナル(Emergency Medicine Journal)」で発表された。その要因は、標準体重の人を想定した自動車の安全設計にあるかもしれないという。

 米カリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)とウェストバージニア大学(West Virginia University)の運輸安全研究者らは、米国で起きた交通事故に関するデータベース「死者数分析報告システム(Fatality Analysis Reporting SystemFARS)」を分析した。

 研究チームは1996~2008年のデータから、2台の自動車間で起きた衝突事故5万7000件以上を抽出。さらに双方の当事者が同様の大きさ・種類の車を運転していた事故のみに対象を絞り、年齢や飲酒の有無などの要素を取り除いた上で、死亡者を推定体格指数(BMI)でグループ分けし、死亡率を比較した。

 BMIは肥満度の指標で、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割り算出する。成人の場合、BMIが18.5~24.9だと標準体重、18.5未満は痩せ過ぎ、25.0~29.9は太り過ぎ、30.0以上は肥満体とされる。

■死亡率、極端な肥満体型では80%増

 研究チームによると、痩せ過ぎの運転者は標準体重の運転者と比べ死亡リスクが19%高かった。BMI30~34.9の場合、リスク増加幅は21%、35~39.9では51%、40以上の極端な肥満体型の場合は80%も増加したという。

 肥満女性はさらにリスクが高く、BMI35~39.9のグループの死亡率は標準体重の人々と比べほぼ2倍だった。

 研究チームは、死亡率にこれほどの差が出たことについて、肥満体型の人々が事故で負傷する部位は胸部が多く、頭部が少ないことが一因の可能性があると指摘している。

■腹部の脂肪のせいでシートベルトの締め付け遅れる

 さらに別の要因として、肥満の人はシートベルトの着け心地を嫌ってきちんと装着しない可能性や、車の安全設計に欠陥がある可能性も指摘されている。

 研究チームによれば、遺体を用いた衝突実験で、正面衝突事故の場合、シートベルトが骨盤を締め付けて体の動きを止めるまでの間、標準体重の人の体はわずかしか前方に動かなかった一方、肥満者は特に下半身が大幅に前方に投げ出されることが分かった。これは腹部の脂肪がスポンジパッドのような役割を果たし、シートベルトが締まるまでの時間が増えたことが原因だった。

 研究チームは「太り過ぎまたは肥満体の乗員を守るための乗用車の安全性能は、公衆衛生においてその重要性が高まっているかもしれない」「乗用車は標準体重の乗員を想定した安全設計は充実している一方で、太り過ぎまたは肥満の人々を守る設計が不足している可能性がある」と述べている。(c)AFP