【12月27日 AFP】パキスタンでは今月17日以降、小児350万人以上がポリオワクチンの接種を受ける機会を逃した──世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の関係者が21日、AFPに語った。

 感染すれば短時間のうちに手足が弛緩してまひする残酷な病気から子どもたちを守るため、パキスタンでは国連(UN)の支援の下でポリオ撲滅計画が実施されている。しかし17日に始まった接種プログラムの最初の週にシンド(Sindh)州の州都カラチ(Karachi)と同国北西部でワクチン接種プログラムに従事していた9人が相次いで殺害されたことからプログラムに遅延が生じている。

 パキスタンにおけるポリオ撲滅計画のWHOの上級調整官エリアス・デューリー(Elias Durry)博士は、「ワクチン接種が必要な小児は1850万人だが、実際に接種を受けたのは1490万人。350万人以上がワクチンを受けられなかったことになる」と説明した。

 反政府イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(Tehreek-e-Taliban PakistanTTP)」はこれまでにもワクチン接種チームを脅迫しており、今年6月にはスパイ活動を隠すためにワクチン接種が行われているとして北西部族地域のワジリスタン(Waziristan)で接種を禁止した。ただし、先週相次いだ襲撃についてTTPは関与を否定している。

 一方、数年前からパキスタンの人々の間でワクチンへの疑念が広がっており、ポリオ根絶プログラムにも影響が出ている。十分な教育を受けておらず他者の影響を受けやすい親の中には、ワクチンに関する「荒唐無稽な陰謀説」を信じ込んでワクチンに拒否感を持つ人も多い。

 人口約1億8000万人、イスラム教徒が大半を占めるパキスタンは、感染力が強く、まひの原因となるポリオがいまだに流行するわずか3か国のうちの1つ。2005年には28人だった感染者は、昨年には約200人に急増した。(c)AFP