【12月19日 AFP】米ペンシルベニア(Pennsylvania)州のフィラデルフィア小児病院(Philadelphia)の医師らは先週、「意外な」協力者を小児に初めて使った治療方法で、白血病で余命わずかとみられていた7歳の少女の命を救うことに成功したと発表した。協力者とは、遺伝子操作を行ったヒト免疫不全ウイルス(エイズウイルス、HIV)だ。

 小児がんが専門の小児科医で、治療を担当したスティーブン・グラップ(Stephan Grupp)氏らによると、約2年にわたって化学療法を続け、再発を2回繰り返したエミリー・ホワイトヘッド(Emily Whitehead)さんは、回復の見込みが「薄かった」という。そのため今年2月、「毒をもって毒を制す」実験的な治療プログラムを実施することにした。

 後天性免疫不全症候群(エイズ、AIDS)を引き起こす特性を取り除いた改変エイズウイルスを使い、医師らはエミリーさん自身の免疫細胞を、白血病に打ち勝つことができる細胞に変えて治療に使用。エミリーさんは、正式には「CTL019治療法」と呼ばれるこの治療を受けたわずかな患者の1人であり、最初の小児患者だ。病院は、この治療法がまだ「特効薬」と呼べる段階にはないことを強調しているが、エミリーさんの場合は少なくとも、劇的な成功といえそうだ。

 グラップ医師は、治療の過程においてエイズを発症する危険はまったくなかったと説明している。治療は完了しており、同医師らによれば、特に良かったことは、強化された免疫細胞が継続的に「患者の体内に残り、がんの発現を防いでいる」ことだという。

 同医師は病院のホームページで、細胞療法は最終的に、現在はがんを防ぐための最終手段として一般的に採用されてされているものの、治療費が高く、痛みを伴う骨髄移植に取って代わる可能性があると述べている。

 エミリーさんの両親は病院に対し、治療の成功は家族の世界を変えたと話したという。髪の毛がすべて抜けてしまう化学療法を受ける代わりに、エミリーさんはまた学校に通い始め、愛犬のルーシーと散歩をしたり、サッカーをして遊んだりしている。(c)AFP/Sebastian Smith