【12月13日 AFP】大阪府吹田市の国立循環器病研究センター(National Cerebral and Cardiovascular Centre、国循)が、ダチョウの血管から作った人工血管を使いブタのバイパス手術に成功したことで、人間の冠動脈バイパス手術にも応用できるかもしれないとの期待が高まっている。

 同センターの研究チームは、ダチョウの長い首から摘出した血管を使い、最長30センチ、内径わずか2ミリの人工血管を作ることに成功した。従来のバイパス手術では、亡くなったドナー(臓器提供者)や死んだ動物の体から摘出した血管や、合成繊維や合成樹脂を使って作った人工血管が用いられているが、血液の凝固を防ぐためには、少なくともこの2倍の内径が必要とされている。

 同センター生体医工学部の山岡哲二(Tetsuji Yamaoka)部長によると、ダチョウから取り出された頸動脈には、凝固を防ぐため分子配列にナノ単位の精密な加工が施された。ダチョウからは細く長い血管を安定的に供給でき、人工血管の作成に適しているという。

 研究チームはこの人工血管を使い、左脚と右脚の動脈をつなぐ大腿動脈バイパス手術をミニブタ5匹に施した。山岡部長が先週語ったところによると、移植後のブタの体内では抗凝固剤を使わなくても、血液が人工血管をスムーズに流れていることが確認された。これは、細く長い人工血管を用いた動物のバイパス手術に成功した世界で初めての例だという。

 山岡部長によると、短い人工血管を使ったバイパス手術には、ラットなどの小型動物を対象とした成功例がこれまでにもあったが、人間の心臓バイパス手術に必要な血管の長さは最低でも10センチ、脚の手術には20センチ必要だという。

 山岡部長の研究チームは3年以内に臨床試験を開始させたいとしている。(c)AFP