【10月19日 AFP】チェコで心臓の摘出手術を受け、人工心臓で臓器提供者を待ち続けていた38歳の男性が死亡した。男性は人工心臓のまま半年間生き延び、人工心臓での生存世界最長記録を更新していた。

 消防隊員のヤクブ・ハリク(Jakub Halik)さんは4月、悪性腫瘍ができた心臓を摘出し、臓器提供者(ドナー)を待つこととした。だが適合するドナーが見つからないうちに、この数週間で容態が悪化し13日朝に死去した。死因は肝臓と腎臓の機能障害だったという。

 日刊紙ムラダー・フロンタ・ドネス(Mlada fronta Dnes、今日の青年戦線)は18日、これまで人工心臓の患者がこれほど長く生存した例は世界にないとの担当医師の話を伝えた。

 大衆紙ブレスク(Blesk)は、ハリクさんを「心臓はなくとも偉大な心の持ち主だった」とたたえた。チェコ各地の消防署では、同僚だったハリクさんへの弔意を示す黒い旗が掲げられた。

 プラハ(Prague)の実験医学研究機関「IKEM」の心臓医学の権威、ヤン・ピルク(Jan Pirk)氏は8月、ハリクさんのような屈強な成人男性の場合、適合する心臓を見つけることはたやすいことではないと危惧していた。ピルク氏はハリクさんを救うため、あらゆる手を尽くしたと語った。

 IKEMでハリクさんを担当していた看護師はブレスクに、ハリクさんは快活な消防隊員で妻と12歳の息子をとても愛していたと述べるとともに、「彼の使命は他人の生命を救うことだった。だが残念なことに、私たちの彼を救う能力には限界があった」と話した。(c)AFP