【10月5日 AFP】オランダの女性権利団体が所有する「妊娠中絶船」が、北アフリカのモロッコで問題となっている。安全な方法で中絶を施し、違法中絶による健康リスクから女性を救うことを掲げた同船がイスラム教国に寄港するのは今回が初。しかし、妊娠中絶が違法かつ社会的タブーとされているモロッコでは、大きな反発が起きている。

 非営利団体(NGO)「ウィメン・オン・ウェーブス(Women on Waves)」は4日、「中絶船」が現在、モロッコ北部タンジェ(Tangiers)から東に約40キロのSmir港内に停泊していると明かした。船内には中絶医2名が乗っているという。

 同港では4日朝、治安部隊が出動し港への立ち入りを制限。昼になると港付近に約300人が集まり、抗議デモを行った。

 同船がモロッコへ向けて出港したことは1日に発表されたが、ウィメン・オン・ウェーブスによるとその数日前には既にモロッコ当局の目をかいくぐり、ひそかに入港していたという。モロッコには5~6日間滞在したい考えだという。

 ウィメン・オン・ウェーブスはモロッコ政府統計を引用し、同国では毎日600~800件の違法中絶が行われていると主張している。同団体の創設者で中絶医のレベッカ・ゴンペルツ(Rebecca Gomperts)氏は「適切な処置が取られているのはこのうち200件ほどにとどまり、しかも財力のある女性しか利用できていないのが問題だ」と述べ、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の統計によればモロッコでは毎年平均78人の女性が中絶によって死亡していると非難している。

「妊娠中絶船」は過去11年間にアイルランド、ポーランド、ポルトガル、スペインを訪れ、行く先々で反中絶団体の抗議デモを引き起こしている。(c)AFP/Omar Brouksy