【6月7日 AFP】がん細胞を直接攻撃するのではなく、患者の免疫系を強化するタイプのがん治療薬2種を用いた臨床試験が成功を収め、より大規模な臨床実験へと進む準備ができたと米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)の研究チームが2日、発表した。

 2種の治療薬は共に米医薬品大手ブリストル・マイヤーズスクイブ(Bristol-Myers Squibb)が開発したもの。服用者の体を蝕むがん細胞の保護膜を破壊し、免疫系の働きを助けるという。

 米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」と米シカゴ(Chicago)で開かれた米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical OncologyASCO)で発表された第1相試験では、一般的な治療法で効果が見られなかった非小細胞肺がん、メラノーマ(悪性黒色腫)、腎臓がん患者の4人に1人に腫瘍の大幅な縮小が確認された。

 免疫細胞の表面に存在するタンパク質PD-1の結合を阻害する「BMS-936558」(抗PD-1抗体)の臨床試験は、ジョンズ・ホプキンス大のスザンヌ・トパリアン(Suzanne Topalian)教授(外科・腫瘍学)が率いた。

 296人を対象に行われたこの試験では、非小細胞肺がん患者18%、メラノーマ患者28%、腎臓がん患者27%の腫瘍が著しく縮小した。さらに被験者の5~9%に6か月以上の病状安定がみられたという。ただし、薬の服用が生存率に及ぼす影響についてはさらなる研究が必要だと研究チームは述べている。

 一方、がん細胞の表面に存在するタンパク質PD-L1の結合を阻害する「BMS-936559」(抗PD-L1抗体)の臨床試験は、同大のジュリー・ブラーマー(Julie Brahmer)准教授(腫瘍学)が率い、207人を対象に行われた。その結果、非小細胞肺がん患者10%、メラノーマ患者17%、腎臓がん患者12%に薬の効果が確認された。

 トパリアン教授は2つの治療薬について「PD-1とPD-L1が、がん治療における重要なターゲットだということを強く示している」と指摘している。

 だが、今回の試験では被験者の14%に深刻な毒性作用が確認され、うち3人が肺炎で死亡した。また、副作用として大腸炎や甲状腺異常が確認されたほか、疲労感や肌のかゆみ、発疹といった症状を訴える者もいたという。(c)AFP

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