【5月7日 AFP】東アジア都市部の子供たちに近視が多い原因は、勉強やコンピューターゲームや遺伝的なものではなく、屋外で日光を浴びる時間が短いためだとした豪研究チームの論文が4日、英医学専門誌ランセット(Lancet)に掲載された。

 日光を浴びると脳内化学物質ドーパミンの放出が促される。このことが、眼球が伸びて目に入った光の焦点が合わなくなることを防ぐと考えられている。

 研究を行ったオーストラリア国立大学(Australian National University)のイアン・モーガン(Ian Morgan)教授はAFPの取材に、「明るい光の刺激によるドーパミンの放出が近視を予防していることは明らかだ」と説明した。

 若者の10人に9人が近視だというシンガポールでは、小学生たちが1日に屋外で過ごす時間は、平均でわずか30分だった。これに対し、ヨーロッパ系の子供たちの近視率が10%のオーストラリアの子供たちが屋外で過ごす時間は平均3時間もあった。モーガン氏によると、英国の子供たちの近視率は30~40%、アフリカではわずか2~3%程度だという。

■近視予防には「1日に2~3時間は屋外に」

 東アジアの子供たちは学校でも家庭でも屋外に出ることが少なく、勉強するかテレビを見ているとモーガン教授は指摘する。義務教育以上の年代で最も近視が多かったのは、日本、韓国、中国、台湾の都市や香港(Hong Kong)、シンガポールで、このうち10~20%は失明につながりかねない重度の近視だった。

 東アジアで近視が多い傾向について、50年ほど前までは遺伝的な要因によるものと考えられていた。

 だが、モーガン教授は、遺伝ではなく環境によるものだと強調する。教授によれば、読書やコンピューターに没頭すること自体に害はなく、毎日、一定の時間を屋外で過ごしていれば、室内でいくら勉強に励んでも問題はないという。最も近視リスクが高いのは、勉強ばかりしていて外に出ない子供たちだ。

 モーガン教授は、近視の予防には通学の時間を含めて2~3時間、屋外で過ごせば「ほぼ安全だろう」と語った。さらに教授は、東アジアの国や地域では、日光の下で過ごす時間と勉強の時間を両立できるよう、子供たちの学校での過ごし方を見直す構造的な変化が必要ではないかと指摘した。(c)AFP