FPSゲーム、視覚障害の改善に効果 米研究
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【2月21日 AFP】先天性白内障を発症した成人の視力が、戦場で敵を撃つタイプのFPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)と呼ばれるジャンルのビデオゲームを遊ぶことで回復したとの研究が17日、カナダのバンクーバー(Vancouver)で開かれた米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science、AAAS)のカンファレンスで発表された。
研究を率いたカナダ・マクマスター大(McMaster University)のダフネ・マウラー(Daphne Maurer)氏は、永続的な障害があるようにみえる知覚能力の一部は、成人になってから改善が可能であることが示されたと述べた。
■先天性白内障の患者に戦闘ゲーム
マウラー氏率いる研究チームは、まれな先天性白内障を両目に発症した子どもたちの追跡調査を実施していた。先天性白内障は手術と矯正コンタクトレンズを必要とする疾患で、被験者らは全員、生後3か月から10か月の間に通常の視力が損なわれた。
被験者たちは大人になるに連れて視力が回復したものの、視力が20/20(日本の1.0に相当)に達することはなく、顔の認識や視覚の鮮明さ、運動の方向、周辺視野、両眼視などに問題が残った。
過去の研究で、特定の視覚疾患を発症した人々の視力が、FPSを遊ぶことで回復することが分かっていたので、マウラー氏はこの方法を自らの研究テーマに選んだ。
■累計40時間のプレイで視力改善
研究では19~31歳の被験者6人を1か月間追跡調査した。被験者はゲームソフト大手エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts、EA)のFPSゲーム「メダル・オブ・オナー(Medal of Honor)」を、1日2時間以内、週5日間までの制限下で、累計40時間プレイした。
実験の結果、6人中5人で20/32~20/100だった視力が20/20近くまで向上した。また顔の認識能力が高まり、小さな文字を認識することができるようになり、点の移動する方向を判断できるようになった。
「視神経系が成人になってからも神経のつながりを作ったり再結合させたりするに十分なほど可塑的であることを示唆しているように思える。これはあらゆる視覚障害にあてはまるかもしれない」と、マウラー氏は記者団に語った。
マウラー氏自身は「ゲーマー」ではなく、自分の研究のために人々に暴力的なゲームをプレイさせることに抵抗があったという。「われわれの介入のせいで被験者がこれらゲームの中毒になる恐れも多少はあった。だからゲームをする時間を制限した」。だが、研究から得られた結果は有意義だった。
FPSはテンポが速く、自分の正面にいる相手と、周辺にいる相手を監視し続ける必要がある。そのためドーパミンやアドレナリンの量が増え、視力を向上させる上で脳を柔軟にする効果がある。
■独自に治療用ゲームを開発へ
現在マウラー氏の研究チームは、独自のゲームの開発を進めている。メダル・オブ・オナーと同じ特徴を備えつつ、両眼視の能力を向上させる訓練の要素も盛り込む予定だ。
「(他の科学者らとの)ネットワークで、独自のゲームを開発している。暴力的なゲームではないのでなお良いゲームになるはずだ」とマウラー氏は語った。(c)AFP/Kerry Sheridan
研究を率いたカナダ・マクマスター大(McMaster University)のダフネ・マウラー(Daphne Maurer)氏は、永続的な障害があるようにみえる知覚能力の一部は、成人になってから改善が可能であることが示されたと述べた。
■先天性白内障の患者に戦闘ゲーム
マウラー氏率いる研究チームは、まれな先天性白内障を両目に発症した子どもたちの追跡調査を実施していた。先天性白内障は手術と矯正コンタクトレンズを必要とする疾患で、被験者らは全員、生後3か月から10か月の間に通常の視力が損なわれた。
被験者たちは大人になるに連れて視力が回復したものの、視力が20/20(日本の1.0に相当)に達することはなく、顔の認識や視覚の鮮明さ、運動の方向、周辺視野、両眼視などに問題が残った。
過去の研究で、特定の視覚疾患を発症した人々の視力が、FPSを遊ぶことで回復することが分かっていたので、マウラー氏はこの方法を自らの研究テーマに選んだ。
■累計40時間のプレイで視力改善
研究では19~31歳の被験者6人を1か月間追跡調査した。被験者はゲームソフト大手エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts、EA)のFPSゲーム「メダル・オブ・オナー(Medal of Honor)」を、1日2時間以内、週5日間までの制限下で、累計40時間プレイした。
実験の結果、6人中5人で20/32~20/100だった視力が20/20近くまで向上した。また顔の認識能力が高まり、小さな文字を認識することができるようになり、点の移動する方向を判断できるようになった。
「視神経系が成人になってからも神経のつながりを作ったり再結合させたりするに十分なほど可塑的であることを示唆しているように思える。これはあらゆる視覚障害にあてはまるかもしれない」と、マウラー氏は記者団に語った。
マウラー氏自身は「ゲーマー」ではなく、自分の研究のために人々に暴力的なゲームをプレイさせることに抵抗があったという。「われわれの介入のせいで被験者がこれらゲームの中毒になる恐れも多少はあった。だからゲームをする時間を制限した」。だが、研究から得られた結果は有意義だった。
FPSはテンポが速く、自分の正面にいる相手と、周辺にいる相手を監視し続ける必要がある。そのためドーパミンやアドレナリンの量が増え、視力を向上させる上で脳を柔軟にする効果がある。
■独自に治療用ゲームを開発へ
現在マウラー氏の研究チームは、独自のゲームの開発を進めている。メダル・オブ・オナーと同じ特徴を備えつつ、両眼視の能力を向上させる訓練の要素も盛り込む予定だ。
「(他の科学者らとの)ネットワークで、独自のゲームを開発している。暴力的なゲームではないのでなお良いゲームになるはずだ」とマウラー氏は語った。(c)AFP/Kerry Sheridan