【2月15日 AFP】加工食品や医薬品に日常的に使われている人工ナノ粒子(超微細粒)が健康に及ぼす影響について、注意を呼びかける研究論文が、12日の科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー(Nature Nanotechnology)」に掲載された。

 人工ナノ粒子は、酸化チタンやケイ酸アルミニウムの形で錠剤や食品の安定剤やクリーム、さらには液体の凝固防止剤として使われるケースが増えている。過去の研究では、ミクロンおよびナノ径の粒子が痛みを伴う炎症疾患「クローン病」の発症に関与している可能性が示唆されていた。

 米ニューヨーク(New York)のコーネル大学(Cornell University)のマイケル・シューラー(Michael Shuler)氏率いる研究チームは、ヒトの腸内膜から採取した細胞を使った研究とニワトリを使った実験を実施。ニワトリには、先進国の成人男性が摂取するのと体重比でほぼ同量の薬剤が投与された。

 研究で50ナノメートル(1ナノメートル=1メートルの10億分の1)のポリスチレン粒子を大量に経口投与されたニワトリは、食品中の鉄分を吸収する量が減少していた。また、長期投与が行われたニワトリでは、栄養吸収で重要な役割を果たす、腸絨毛(ちょうじゅうもう)と呼ばれる指の形をした小さな突起部が「改造」されていた。この変化により、腸絨毛の鉄分を吸収する表面積が増えていたという。

 論文は「摂取されたナノ粒子が体内に吸収されるには、まず腸内上皮層が関門になる」と説明。また「実験に使われたポリスチレン粒子は、毒性のない物質と考えられているが、通常の生理過程との相互作用を通じて、慢性的には有害だが、とらえにくい反応が起きている可能性が示唆された」とまとめた。

 大量のナノ粒子が体内に入ることにより、カルシウムや銅、亜鉛、ビタミンA、D、E、Kの吸収も影響を受ける可能性があるが、この点についてもさらなる研究が必要だという。(c)AFP