【1月30日 AFP】子どもが欲しいができないカップルに、無償で自分の精子を提供している米カリフォルニア(California)州在住の男性が、米規制当局から聴取に応じるよう求められている。

「不妊に悩む夫婦と、女性同士の同性カップル」に精子を無償提供しているトレント・アーセノート(Trent Arsenault)さん(36)が、米食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)の調査対象となったのは2009年。翌年FDAはアーセノートさんに提供停止を求める警告状を発行したが、その後も提供は続けられ、これまでに計14人の子どもが誕生し、現在も何人かが胎内にいる状態だという。

 聴取の日程についてはまだ、何も聞いていないというアーセノートさんは「子どものいないカップルからは山のようにメールが来ているので、(提供を)続けたい。みんな、精子バンクは高すぎると言っている」と語った。

 アーセノートさんは自分のウェブサイトで「髪はブロンド、目はブラウン。シリコンバレー(Silicon Valley)で働く技術者」「ルーツは半分がドイツ、アイルランドとフランス4分の1ずつ。8歳になるまでに耳で覚えてピアノを弾くようになり、スペイン語と英語を話し、米海軍兵学校(US Naval Academy)でエンジニアリングを学んだ」と自己紹介している。サイトからリンクをたどると、提供者としての免責事項と子どもとの面会権を放棄する旨が書かれている。

■コスト高い登録バンク、無償提供には感染症の危険も

 FDAではこの件については調査中としてコメントを控えているが、精子提供者は性感染症について、リスク要因も含めた審査を受けなければいけないと規制している。

 アーセノートさんのサイトにはHIV、クラミジア、淋病、A・B・C型肝炎、ヘルペスに陰性だったことを示す検査結果が掲載されているが、その精子サンプルについては、「伝染性物質の検査は行われていません。注意:被提供者に感染症リスクがあることをアドバイスしてください」との注記が記されている。

 バージニア州の精子バンク、フェアファックス・クライオバンク(Fairfax Cryobank)の広報担当トリナ・レオナード(Trina Leonard)氏によると、無償の精子提供を利用する人は数百ドルを節約しているかもしれないが、非常に高いリスクを負っていると警告する。「信頼できる精子バンクでは非常に多くの試験や予防策を行っている。(それに比べ)無償の精子提供を利用するのは、出会ったばかりの相手と子どもを作るとか、初めてデートした相手と無防備なセックスをするようなもの。クレイジーだ」

 同氏によると、無償で精子を提供しているドナーのうち、公式な精子バンクの審査に通るのはわずか1~2%しかいないという。

 登録された精子バンクの利用には一般的に1回200~675ドル(約1万5000~5万2000円)かかる。フェアファックス・クライオバンクの場合、審査に通るドナーは希望者の1~2%のみと厳選されており、ドナー側には1回の提供につき通常100~150ドル(約7600~1万1500円)の報酬が支払われているという。

 一方でアーセノートさんのサイトには、精子を無償提供している動機を書いた十か条がある。その中には「コミュニティに対するボランティア精神」、「女性に対する敬意、神に対する信仰、そして商業的な精子バンクで儲けようとする強力な企業たちへの抵抗」などが挙げられている。

「幼なじみの1人は、両親が何年間も子どもを作ろうと頑張った末にできた1人っ子だった。子どもを持とうとして奮闘する家族たちをトレントは直接、見聞きして知っている。その助けになることができればと願っている」とアーセノートさんは記している。(c)AFP/Kerry Sheridan