【12月12日 AFP】オランダの研究所が今年9月、ヒト間で感染伝播する鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の変異株の作成に初めて成功した。この研究をめぐり、仏パリ(Paris)で9日開かれた世界健康安全保障イニシアチブ(Global Health Security InitiativeGHSI)の会合では、各国保健相らが強い警戒感を表明した。

 グザビエ・ベルトラン(Xavier Bertrand)仏保健相は、「非常に警戒する必要がある。けさは、この問題が多く話題に上った」と会合の合間に明らかにした。GHSIは主要7か国(G7)や欧州委員会(European Commission)、世界保健機関(WHO)で構成される。

 H5N1型は、ヒトが感染した場合の致死率が60%に達する。ただ、ヒト間では感染しないことから、これまでの死者数は世界で350人程度にとどまっていた。

■強毒性変異株、悪用される恐れも?

 ところが今年9月、オランダ・ロッテルダム(Rotterdam)のエラスムス医学センター(Erasmus Medical Centre)のロン・フーシェ(Ron Fouchier)氏率いる研究チームが、ほ乳類間で感染するH5N1変異株の作成に初めて成功したと発表。この変異ウイルスは「想定よりも簡単に作成できる」「研究室の中では、空気感染可能なウイルスへの変異も可能だった。この(変異の)過程は、自然界でも起こり得る」などと指摘した。

 発表を受け、この変異ウイルスがなんらかの形で自然界に広まる恐れや、研究成果がテロリストに利用される危険性への不安が高まっている。

 こうした不安があることについて、欧州連合(EU)のジョン・ダリ(John Dalli)欧州委員(保健・消費者保護担当)は、「オランダ当局からウイルスが厳重に保管されているとの確約を得ている」「研究に関する情報も十分に管理されており、変異に関する詳細な情報は明らかにされていない」などと記者団に述べた。(c)AFP