【11月22日 AFP】心臓発作を起こした後の患者に対し、患者本人に由来する心臓幹細胞を注入した小規模の実験で、血液循環機能が改善され、心筋の活力が復活したとの結果が、14日の英医学誌「ランセット(Lancet)」電子版に掲載された。

 心不全の症状の治療だけではなく、予後の悪影響の解消を目的に、自己心臓幹細胞を注入したのは初めての試み。

 急性心筋梗塞を起こし、予後が重症の患者16人の心臓幹細胞で実験が行われた。使用された幹細胞は、患者が冠動脈バイパス手術を受けた際に摘出された冠動脈から取り出された。

 心機能の指標は左室駆出分画率(LVEF)と呼ばれるが、これは1回の鼓動で左心室が血液を送り出す機能を測るもので、健康な人のLVFVは50%以上だが、被験者らのLVFVは40%以下に下がっていた。この値だと、息切れやめまいが慢性的に起こり、重症な場合が多い。

■心機能が改善、損傷細胞も減少

 処置開始から4か月以内に被験者のLVFVは8.5%上昇し、1年後には12%上昇した。これは研究者らの予測の4倍以上の上昇だった。

 被験者の心臓をスキャンした結果でも、梗塞による損傷範囲の減少がみられ、心臓細胞は一度損傷すると永久に死んだままだとするこれまでの定説を覆す結果となった。

 また被験者らの生活の質(QOL)にも有意な向上がみられた。一方で、大きな副作用は発生しなかった。

 一方、対照群として同様の心疾患を抱える7人の患者と比較したところ、LVFVや細胞の損傷、QOLなどで変化はみられなかった。

■「循環器系内科の革命」

 研究を主導した米ルイビル大(University of Louisville)のロベルト・ボリ(Roberto Bolli)氏は「目覚ましい結果だ。機能の向上や改善の原因はわからないが、LVFVの上昇と損傷の減少が起きたことは間違いない。これらの結果が今後の研究で覆ることがなければ、私が生きている時代で、循環器系内科の最大の革命になるだろう」と語った。

 新たな治療法の安全性や有効性を調べるための実験は通常3段階に分けて行われるが、同チームでは、第2段階としてさらに規模の大きな実験を行うための資金源を求めている。

 今回の研究結果は、米フロリダ(Florida)州で開かれたアメリカ心臓協会(American Heart AssociationAHA)の会合でも発表された。(c)AFP