【11月1日 AFP】やけどや外傷性ショック、肝臓病などの治療で使われることの多いたんぱく質「ヒト血清アルブミン(HSA)」をコメから作ることに成功したと、中国の研究チームが31日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表した。

 HSAの製剤は通常、人の血液に由来している。今回の発見は、HSA製剤の製造に画期的な進歩をもたらす可能性を秘めている。

 コメから抽出する方法は、中国・武漢大学(Wuhan University)とカナダ国立研究機構(National Research Council of Canada)、米ニューヨーク州立大学アルバニー校(University at Albany)の共同チームが考案した。

 イネがHSAを大量に生産するよう種子(コメ)の遺伝子を組み換え、コメからHSAを精製する方法を開発。コメ1キロあたり約2.75グラムのHSAを採取した。

 これらのHSAを肝硬変のマウスに投与したところ、人の血液由来のHSA製剤と同等の効果が見られた。

 論文は、「われわれの結果は、コメのバイオリアクターが費用効率の高い組み換えHSAを作製できることを示している。こうしたHSAは安全で、HSAに対する世界的な需要の高まりにも応えられるかもしれない」と述べている。

■血液由来による不安

 HSA製剤は世界で年間約500トンが必要とされている。中国では2007年、HSA製剤が大幅に不足し、製剤の価格がつり上がると同時にニセの製剤が市場に大量に出回った。

 HSA製剤は血液に由来していることから、肝炎やHIVの感染源になることも懸念されている。

今回開発されたコメ由来のHSAについては、動物実験や臨床試験を繰り返して安全性を確認する必要がある。(c)AFP