【10月24日 AFP】認知症の高齢者が徘徊(はいかい)して迷子になってしまった場合に居場所を把握できるよう、衛星利用測位システム(GPS)を内蔵した靴が今月、世界で初めて米国で発売される。

 小型GPS開発メーカーのGTXコープ(GTX Corp)は開発発表から2年をかけ、このほど靴メーカーのAetrex WorldwideにGPS内蔵シューズ3000足を出荷したと発表した。両社は今年、この商品について米連邦通信委員会(FCC)の認可を受けている。

 予想販売価格は1足300ドル(約2万3000円)ほど。購入者は、アルツハイマー型認知症によって徘徊する高齢者の位置を確認する監視サービスを設定できる。

 開発プロジェクトの顧問を務めたジョージ・メイソン大学(George Mason University)保健福祉学部のアンドリュー・カール(Andrew Carle)氏は、この靴によって、高齢者の徘徊が原因で生じる騒ぎや危険な事故を回避し、命を救うことができると説明する。

 カール氏によると、米国には500万人以上のアルツハイマー型認知症患者がいることがこれまでの研究で分かっており、数年以内に4倍に増えると予想される。患者の6割が徘徊して迷子になる可能性があり、24時間以内に発見されなかった場合には約半数が脱水症やけがなどで亡くなる恐れがあるという。

 同様の追跡装置は腕に装着するブレスレット型や、首から下げるペンダント型があるが、高齢者から拒否されることが多い。

 GPS内蔵シューズは、見かけは普通の靴と変わらないが、かかと部分にGPSが埋め込まれており、「ジオフェンス」と呼ばれる場所の範囲を設定すると、靴を履いている人がその範囲から外に出た場合に家族や介助者に警報で知らせる仕組みになっている。

 カール氏によると、この靴の開発当初の対象は子どもや長距離走者だったが、カール氏の助言によってメーカー側が高齢者向けの計画に変更した。行動的でありたいと思う高齢者の不安を和らげることができるだろうと述べている。(c)AFP/Rob Lever