「寿命延長遺伝子」サーチュインに効果無しか、ネイチャー誌
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【9月26日 AFP】サーチュインというタンパク質が寿命を延ばすという過去10年間でなされてきた多くの研究には深刻な欠陥があるという論文をロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London)の研究チームが英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。
サーチュインを投与すると寿命が最大で50%延びる可能性を示したミミズやミバエを使った先駆的な実験を受けて多くの追試が行われ、その多くが当初の研究結果を支持する結果となっていた。
その結果、サーチュインを強化するという触れ込みで、効果が定かではない健康食品が次々と生まれた。その多くがサーチュインを活性化させる効果があるとされたレスベラトロールを含んでいた。
だが、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ健康加齢研究所(Institute of Healthy Ageing)のデービッド・ジェムズ(David Gems)氏が率いた研究チームは、サーチュインと長寿の間に因果関係があるというのは幻想だということを示す明白な証拠を示した。
研究チームは、指標となる研究を再現し、寿命延長効果をもたらすとされたミミズやミバエの「Sir2」や哺乳類の「SIRT1」という遺伝子以外に、寿命延長効果をもたらす要因がなかったか検討したところ、「サーチュインは長寿の鍵とは言えず、寿命延長効果はないとみられる」という結論になったという。
■過去の研究の不備を突き止める
過去の実験の主な問題点は、実験が比較した遺伝子操作された個体と自然の個体との間にありうるあらゆる相違点を検討しなかったことにあった。
例えば線虫でサーチュインのレベルだけが異なるように慎重に準備した実験では、寿命延長効果はみられなかった。つまり、サーチュイン以外の要因が寿命延長に寄与したが、それが見逃されていたということになる。
かつてこれらの先駆的な実験の一部を行ったマサチューセッツ工科大学(MIT)のレオナード・ガランテ(Leonard Guarante)氏も、ネイチャーに掲載された「短報」の中で、自身が行った過去の実験には不備があったことを認めた。
ジェムズ氏らがミバエを使って行った同様の実験でも、サーチュインのためとされていた結果は実際は別の遺伝的要因で起きていたことが分かった。
さらに、過去の研究では人工的に合成したミバエのサーチュインがレスベラトロールで活性化されるとされていたが、今回研究チームが2か所の研究所で複数の手法を使って調べたところ、そのような結果は得られなかった。
その上、食事を制限すると寿命が延びるという現象(これ自体は疑いがない)にサーチュインが関与しているという主張も否定した。
■寿命延長効果なくても健康上の利点
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(Ecole Polytechnique Federale de Lausanne)のCarles Canto氏とJohan Auwerx氏はネイチャーに寄せたコメンタリーで、今回の研究は、イースト菌の寿命の研究から疑問が浮上していたサーチュインの寿命延長効果にとどめをさしたと指摘した一方で、サーチュインは寿命延長の万能薬ではないものの大きな健康上の利点がある可能性はあると述べた。
直接的な効果か、間接的な効果かは別として、サーチュインはマウスなどの哺乳類を、高脂肪の食事や加齢関連の疾病による代謝ダメージから守る効果があることが示されていた。
Canto氏らは、SIRT1の活性化は、全般的な加齢による生理学的な衰えを遅らせ、先天性・後天性の病気の治療として有望なアプローチであることに変わりはないと述べる。
言い換えると、サーチュインは健康な動物の寿命を延ばす効果はないかもしれないが、食べ過ぎによって身体が受けたストレスを緩和する効果がある可能性はある。(c)AFP
サーチュインを投与すると寿命が最大で50%延びる可能性を示したミミズやミバエを使った先駆的な実験を受けて多くの追試が行われ、その多くが当初の研究結果を支持する結果となっていた。
その結果、サーチュインを強化するという触れ込みで、効果が定かではない健康食品が次々と生まれた。その多くがサーチュインを活性化させる効果があるとされたレスベラトロールを含んでいた。
だが、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ健康加齢研究所(Institute of Healthy Ageing)のデービッド・ジェムズ(David Gems)氏が率いた研究チームは、サーチュインと長寿の間に因果関係があるというのは幻想だということを示す明白な証拠を示した。
研究チームは、指標となる研究を再現し、寿命延長効果をもたらすとされたミミズやミバエの「Sir2」や哺乳類の「SIRT1」という遺伝子以外に、寿命延長効果をもたらす要因がなかったか検討したところ、「サーチュインは長寿の鍵とは言えず、寿命延長効果はないとみられる」という結論になったという。
■過去の研究の不備を突き止める
過去の実験の主な問題点は、実験が比較した遺伝子操作された個体と自然の個体との間にありうるあらゆる相違点を検討しなかったことにあった。
例えば線虫でサーチュインのレベルだけが異なるように慎重に準備した実験では、寿命延長効果はみられなかった。つまり、サーチュイン以外の要因が寿命延長に寄与したが、それが見逃されていたということになる。
かつてこれらの先駆的な実験の一部を行ったマサチューセッツ工科大学(MIT)のレオナード・ガランテ(Leonard Guarante)氏も、ネイチャーに掲載された「短報」の中で、自身が行った過去の実験には不備があったことを認めた。
ジェムズ氏らがミバエを使って行った同様の実験でも、サーチュインのためとされていた結果は実際は別の遺伝的要因で起きていたことが分かった。
さらに、過去の研究では人工的に合成したミバエのサーチュインがレスベラトロールで活性化されるとされていたが、今回研究チームが2か所の研究所で複数の手法を使って調べたところ、そのような結果は得られなかった。
その上、食事を制限すると寿命が延びるという現象(これ自体は疑いがない)にサーチュインが関与しているという主張も否定した。
■寿命延長効果なくても健康上の利点
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(Ecole Polytechnique Federale de Lausanne)のCarles Canto氏とJohan Auwerx氏はネイチャーに寄せたコメンタリーで、今回の研究は、イースト菌の寿命の研究から疑問が浮上していたサーチュインの寿命延長効果にとどめをさしたと指摘した一方で、サーチュインは寿命延長の万能薬ではないものの大きな健康上の利点がある可能性はあると述べた。
直接的な効果か、間接的な効果かは別として、サーチュインはマウスなどの哺乳類を、高脂肪の食事や加齢関連の疾病による代謝ダメージから守る効果があることが示されていた。
Canto氏らは、SIRT1の活性化は、全般的な加齢による生理学的な衰えを遅らせ、先天性・後天性の病気の治療として有望なアプローチであることに変わりはないと述べる。
言い換えると、サーチュインは健康な動物の寿命を延ばす効果はないかもしれないが、食べ過ぎによって身体が受けたストレスを緩和する効果がある可能性はある。(c)AFP