【9月4日 AFP】9.11米同時多発テロで攻撃された世界貿易センタービル(World Trade CenterWTC)で作業にあたった消防隊員は、がん発症の危険性が通常より高く、また、現場の救助隊員らの全般的な疾病率も依然高いままとの報告書が2日、英医学誌ランセット(Lancet)に掲載された。

 ランセット誌は、9.11から10年を記念した特集号の論説で、「あの日の出来事は、米国と世界の歴史の軌道を変えた。それは、健康に対して深刻な結果をもたらし、現在も及ぼし続けている」と述べた。

■消防士9853人を調査

 同誌に掲載されたニューヨーク市消防局(New York Fire DepartmentFDNY)の医療部門責任者、デービッド・プレザント(David Prezant)氏の率いる研究チームの論文によると、10年前にツインタワーに急行したニューヨーク市の消防隊員は、他の消防隊員と比べて、がんになる危険性が19%高かった。

 研究チームは消防隊員9853人を対象に、9.11よりはるか以前からの健康記録を分析。WTC攻撃の現場にいた消防隊員のがん発症事例は、ニューヨーク市総人口の統計から推計すると238例の見込みだが、実際には263例に上った。その一方で、現場にいなかったグループでは、母集団からの推計では161例になるはずが実際にはそれより少ない135例だった。

■救助隊員ら2万7000人を調査

 また、同じくランセット誌に掲載されたニューヨーク州のマウントサイナイ医科大学(Mount Sinai School of Medicine)のJuan Wisnivesky氏の研究によると、9.11同時多発テロで作業にあたった救助隊員と復旧作業員ら推計5万人は、身体的・精神的な疾病に苦しんでいることが明らかになった。

 米政府が資金提供するモニタリングプログラムに参加した作業員2万7000人のデータを分析したところ、28%がぜん息を発症したほか、42%が副鼻腔炎を、39%が胃食道逆流症を発症していた。また、28%がうつ病を発症し、32%が心的外傷後ストレス障害(PTSD)、21%がパニック障害を発症していた。

 だが一方、同誌に掲載された別の論文によると、WTC倒壊で生存した救急隊員や一般市民の死亡率は、ニューヨーク(New York)市の総人口の死亡率と比べて低いことも明らかになった。これは、研究に参加した人たちの多くが職についていることも関係している可能性があるという。仕事がある人や、自分から望んでボランティアに参加する人たちは、一般的に総人口の平均よりも健康であるケースが多いと言われているからだ。(c)AFP

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