【7月21日 AFP】興奮状態の認知症患者には抗精神病薬が処方されるケースが多いが、パラセタモールなどのありきたりな鎮痛剤の方が興奮を抑える効果が高いとする論文が、18日の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)」(電子版)に掲載された。

 アルツハイマー病などの認知症では、重度になると、過度に興奮したり攻撃的になったりといった症状が一般的に見られるが、これは患者本人や家族を辛い気持ちにさせるばかりか、介護士にとっても厄介な問題だ。こうした症状は通常、苦痛や、その内容を正確に表現できないといったストレスにより度合いが増す。

 現行では、こういう場合にはまず強力な抗精神病薬と抗うつ薬が処方される。また、多くの国々の高齢者施設で、認知症患者の約半数が示す興奮状態にこれらの薬が処方されている。

 だが、こうした治療には危険性が伴う可能性がある。最近発表された英国の研究結果によると、認知症患者約18万人に抗精神病薬を処方すると、脳卒中が年間1620件、死亡例が年間1800件増えたという。

■患者で実験

 スウェーデンのカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)の研究チームは、鎮痛剤が認知症患者の興奮状態にどの程度効果があるのかを調べるため、ノルウェーの16の高齢者施設から選んだ重度の認知症患者352人で8週間ほど実験を行った。被験者の年齢は、大半が80代半ばから後半だ。

 被験者を、鎮痛剤を使用するグループと対照群に分け、前者では70%にパラセタモールを、20%に依存症や中程度以上の痛みの治療に使用されるブプレノルフィンを、残り10%にモルフィネかプレガバリンの強力な鎮痛剤を、それぞれ毎日服用してもらった。対照群では、抗精神病薬または抗うつ薬を使用する通常の治療法を続けてもらった。

 どの患者がどの薬を服用したかを知らされていない専門家が、実験期間中に面接し、その後4週間の経過観察を行ったところ、鎮痛剤を使用したグループでは興奮状態と痛みが臨床的にも統計的にも大幅に減少していた。

 論文はこの結果について、「臨床医に認知症患者の興奮状態に対処する新たな戦術を提供するもの」だとした上で、「結果を検証するためのさらなる研究が必要」だと述べている。(c)AFP/Marlowe Hood