【6月24日 AFP】将来、人間の寿命が100歳まで延びると予想される社会で、アルツハイマー病によって世界経済が深刻な危機に陥る恐れがある――。米下院外交委員会で23日、米アルツハイマー病対策支援団体「USAgainstAlzheimer's」がこのような見解を示した。

 アルツハイマー病専門医らも参加する同団体によると、現在すでに全世界で2400万~3700万人が回復の望めない認知症とともに生きているが、2050年までに患者数は1億1500万に達する見通しだという。

 高齢化が進む一方で女性が生涯に産む子どもの数が減少傾向にある世界において、生活支援を必要とする高齢者が急増する未来への備えは益々、後手に回ると懸念されることから、研究費を増額してアルツハイマー病の予防研究に着手する必要があると、同団体は指摘した。

 創設者のジョージ・ブラデンバーグ(George Vradenburg)氏は、欧州、露、米、アジアの一部で「人口減少、労働人口の減少、公的医療保険制度に頼る層の増加」がすでに始まっているとコメント。世界的に保険制度の財政負担が重くなり、先進国(特に西欧諸国とアジアの一部)で数年以内に経済成長が右肩下がりとなるリスクが生じる」などと警告した。
 
 英ロンドン(London)を拠点とする国際アルツハイマー協会(Alzheimer's Disease International)によると、2010年に世界がアルツハイマー病に費やしたコストは6040億ドル(約48兆6000億円)で、全世界のGDPの1%に相当する。

 ブラデンバーグ氏は、自分たちの孫の世代には110歳や120歳まで生きるのが当たり前になるとして、「肉体的には健康だが認知能力に問題を抱える人口が増えていく」と指摘。経済を崩壊させずに医療保険財源を確保するためには、高齢者を生産的な納税者として労働人口に取り入れる方法を検討しなければならないと語った。(c)AFP/Kerry Sheridan