【5月24日 AFP】世界保健機関(World Health OrganizationWHO)加盟国の間では、1979年に根絶された天然痘の最後のウイルス株を保存すべきか廃棄すべきか、議論が再燃している。

 前回1986年の議論では、最後の株を保持している米国とロシアの主張が通り、保存することが決議された。

 米露は今回も、天然痘の再来を防ぐための研究は継続されなければならないと主張し、保存したい考えを示した。両国はとりわけ、生物化学兵器の用途で天然痘ウイルスを秘密裏に保持している国がある可能性を懸念している。

 ただし両国は、最終的には廃棄されるべきだとして、廃棄の日程に関する話し合いを5年以内に開始したいと述べている。

 欧州連合(EU)、カナダ、イスラエル、モナコ、コロンビア、中国もこれに同調しており、WHO加盟193か国に23日配布された決議案の草案にも米露の意見が反映されている。

 一方で、北アフリカ諸国、イラン、タイ、ジンバブエ、マレーシアなどの20数か国は、ただちに廃棄されるべきだとして草案に強く反対している。マレーシア代表は「ウイルスを保存すべき科学的根拠はない」と主張。イラン代表は「保存の合意に達した前回の議論から30年も経過している。もはや廃棄の日にちを決める段階にある」と述べた。

 援助団体も廃棄の意見に賛成だ。Third World Networkの顧問を務めるエドワード・ハモンド(Edward Hammond)氏は、「米国とロシアがかぶった保健衛生の仮面の裏には、国家安全保障問題が隠れている」と批判した。

 WHOは両者の妥協案を探るための作業部会を立ち上げており、24日も議論が行われる。最終的には投票で決定されるという。(c)AFP