下半身不随の男性、電極移植術で立てるように 米研究
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【5月21日 AFP】米国の神経外科医チームは、下半身不随の男性の下部脊椎(せきつい)に電極を移植したところ、男性が自力で立ち上がったり足を動かしたりすることができるようになったと20日の英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」電子版に発表した。このような事例は世界初。
男性はつま先、足首、ひざ、腰を自発的に動かすことができる。立った状態を1回あたり最大で4分間持ちこたえることができる。ハーネスを装着し、少々の介添えがあれば、トレッドミルの上でステップ運動もできるという。
11人のチームを率いる米ルイビル大(University of Louisville)脊髄(せきずい)研究センター(Spinal Cord Research Center)のスーザン・ハルケマ(Susan Harkema)教授は、「画期的だ。(脊髄損傷による全身または半身不随者の)日々の暮らしを改善できる大きなチャンスが目の前に開けた。ただし長い道のりになりそうだ」と述べた。
電極移植が行われたのは、2006年にひき逃げ事故に遭って胸から下が不随になったロブ・サマーズ(Rob Summers)さん(25)。「人生ががらりと変わった。4年間、つま先さえ動かせなかったのに。何よりも、幸福感を得られるようになった。筋肉も体の動きになじんでいるので、ほとんどの人が、僕の下半身がまひしていることに気づいていない」と笑顔で語った。
■電極が信号を伝達
まひは、脳から四肢に送られる電気信号(命令)の通り道となっている脊髄が損傷することに起因する。
研究チームは、脳の命令から比較的独立した下部脊椎の神経網に着目した。ここの神経網は、足の筋肉の神経から直接脊髄に送られてきたフィードバック(感覚入力)をもとに、バランスや動作速度、表面や傾きに応じた体重のかけ方などを調節する。
サマーズさんは、まず、このフィードバックシステムを再生させるために足の筋肉を鍛えるトレーニングを26か月間ほど受けた後、腰仙髄に16個の電極を移植された。これらの電極は、主に足首、腰、ひざ、つま先の動きを制御する太い神経束に接続されており、体を動かす時に脳が送る命令と似た電気信号を送る。
■移植治療法の課題
サマーズさんの例は、脊髄まひの患者でも刺激を与える装置が1つあれば自力で立てるようになるのではないかとの期待をふくらませる結果となった。
ただし、こうした治療が行われたのは米食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)が承認した患者5人のうち、サマーズさんだけだ。彼の場合は下半身不随といってもいくらか感覚が残っており、感覚が一切ない不随患者でも治療が効くかは不明だ。それに、サマーズさんは若く、事故以前は全くの健康体だった。
現在、脊髄神経網の感度と機能を高める薬が開発中で、この薬を併用すると移植治療の結果も大幅に改善される可能性がある。(c)AFP
男性はつま先、足首、ひざ、腰を自発的に動かすことができる。立った状態を1回あたり最大で4分間持ちこたえることができる。ハーネスを装着し、少々の介添えがあれば、トレッドミルの上でステップ運動もできるという。
11人のチームを率いる米ルイビル大(University of Louisville)脊髄(せきずい)研究センター(Spinal Cord Research Center)のスーザン・ハルケマ(Susan Harkema)教授は、「画期的だ。(脊髄損傷による全身または半身不随者の)日々の暮らしを改善できる大きなチャンスが目の前に開けた。ただし長い道のりになりそうだ」と述べた。
電極移植が行われたのは、2006年にひき逃げ事故に遭って胸から下が不随になったロブ・サマーズ(Rob Summers)さん(25)。「人生ががらりと変わった。4年間、つま先さえ動かせなかったのに。何よりも、幸福感を得られるようになった。筋肉も体の動きになじんでいるので、ほとんどの人が、僕の下半身がまひしていることに気づいていない」と笑顔で語った。
■電極が信号を伝達
まひは、脳から四肢に送られる電気信号(命令)の通り道となっている脊髄が損傷することに起因する。
研究チームは、脳の命令から比較的独立した下部脊椎の神経網に着目した。ここの神経網は、足の筋肉の神経から直接脊髄に送られてきたフィードバック(感覚入力)をもとに、バランスや動作速度、表面や傾きに応じた体重のかけ方などを調節する。
サマーズさんは、まず、このフィードバックシステムを再生させるために足の筋肉を鍛えるトレーニングを26か月間ほど受けた後、腰仙髄に16個の電極を移植された。これらの電極は、主に足首、腰、ひざ、つま先の動きを制御する太い神経束に接続されており、体を動かす時に脳が送る命令と似た電気信号を送る。
■移植治療法の課題
サマーズさんの例は、脊髄まひの患者でも刺激を与える装置が1つあれば自力で立てるようになるのではないかとの期待をふくらませる結果となった。
ただし、こうした治療が行われたのは米食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)が承認した患者5人のうち、サマーズさんだけだ。彼の場合は下半身不随といってもいくらか感覚が残っており、感覚が一切ない不随患者でも治療が効くかは不明だ。それに、サマーズさんは若く、事故以前は全くの健康体だった。
現在、脊髄神経網の感度と機能を高める薬が開発中で、この薬を併用すると移植治療の結果も大幅に改善される可能性がある。(c)AFP