【5月18日 AFP】自分たちの民族の食事を捨て、高脂肪・高カロリーのジャンクフードに手を伸ばす米国の移民たち――食生活の切り替えの背景には、ジャンクフードは値段が安くどこでも手に入りやすいという理由の他に、米国文化に早く溶け込もうという心理もあるようだ。

 米国の3つの大学の共同チームが行った研究によると、食生活が米国化し、ファーストフードを多く食べている移民は、自分たちのルーツの食習慣を維持している移民に比べて、摂取カロリーが平均182カロリー多く、摂取している飽和脂肪も7グラム多かった。

 またファストフードの多いグループのほうが肥満や、肥満に関連する慢性疾患に罹りやすい傾向が明らかになった。子どもの肥満傾向で見てみると、米国在住15年になる移民の子どもは、米国で生まれた子どもと違いがなく、3人に1人が過体重あるいは肥満だった。

 米国へ移住した後の食生活が悪化する現象は、アフリカ出身者や南米出身者など多くの移民グループについて過去の研究でも指摘されている。しかし今回の研究では、アジア系米国人が「米国への帰属感を高めるために米国風フードを食べるかどうか」という文化的側面にも焦点を当て、2つの実験を行った。

 1番目の対照実験ではアジア系米国人を2つのグループに分け、好きな食べ物を書いてもらったが、その前に片方のグループには「あなたは英語で話せますか?」という質問をした。一見、変哲のない質問に聞こえるが、研究チームによると移民たちは「自分に向けられた場合、外見や肌の色から自分だけ特別に思われたのではないか」と感じ、移民たちの「アメリカ人らしさ」を脅かす効果があるという。実験の結果、この質問で「脅された」グループでは、好きな食べ物にマカロニやチーズ、ハンバーガーといった「アメリカン・フード」を挙げる人の数が、質問されなかったグループの3倍だった。

 2番目の実験でも同じくアジア系米国人を2つのグループに分け、片方のグループには最初に「実験に参加できるのは米国人だが、あなたはなに人か」と聞いてから参加してもらった。そして、BLTサンドイッチやフライドチキン、ホットドッグやハンバーガーといった米国風メニューと、寿司やビーフン、照り焼きチキンなどのアジア風メニューの両方を見せ、食べたいものを選んでもらった。

 結果は非常に対照的で、アメリカ人であるかどうかを問いただされたグループでは6割が米国風メニューから選んだのに対し、問われなかったほうのグループでは7割がアジア風メニューから選んだ。報告ではこの差を食べ物に置き換え、アメリカ人らしさを問われたグループのカロリーと脂肪の摂取のほうが「マクドナルドのチキンナゲット4個分」多くなると表現した。

 こうした食生活を長年続けると、米国へ移住した直後は肥満率の低かった移民たちも、米国風の食物に切り替える中で、米国生まれの人々の「4人に1人」という肥満率に追いついてしまうと研究では警告している。移民のルーツを持つワシントン大、カリフォルニア大学バークレー校、スタンフォード大の3人の米国人研究者が行った同実験の報告は、心理学専門誌「サイコロジカル・サイエンス(Psychological Science)」6月号に掲載される。(c)AFP/Karin Zeitvogel