【2月8日 AFP】食欲とストレスを調節する脳内化学物質の分泌量が遺伝的に少ない人は、重いうつ病(大うつ)を発症するリスクが高いとする論文が、7日の米精神医学専門誌「アーカイブズ・オブ・ゼネラル・サイキアトリー(Archives of General Psychiatry)」に掲載された。

 米ミシガン大(University of Michigan)の研究チームは、「ニューロペプチドY(NPY)」が大うつのリスクの増加に関連していることを実験で見いだした。NPYの分泌量の少なさは遺伝子変異であるため、従来のうつの研究で注目されてきたセロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリンなどとは無関係と考えられる。

■NPYが少ない人は否定的な感情が強い傾向

 研究チームは、3つの実験を行った。1つ目の実験では、被験者を、NPYの発現が「多い」「少ない」「その中間」の3グループに分けた。

 次に、被験者に3種類の言葉(「殺人者」といった否定的な言葉、「希望」といった肯定的な言葉、「物質」といった肯定でも否定でもない言葉)を見せ、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の活動を観察した。NPYの発現が少ないグループでは、否定的な言葉に対し、感情処理に関係する前頭前皮質が強く反応した。逆にNPYの発現が多いグループでは、前頭前皮質はほとんど反応しなかった。

 2つ目の実験では、被験者のあごの筋肉に食塩水を注入し、ほどほどの痛みを20分間ほど耐えてもらった。その前後で、今の感情を言葉で表現してもらった。否定的な感情の度合いは、実験の直前、直後とも、NPYの発現が少ないグループが最も大きかった。

 最後に、大うつの患者グループとうつではないグループでNPYの遺伝子型を比較してみた。すると、NPYの発現が少ない人は前者の方に圧倒的に多かった。

 研究チームは、以上の結果は特定の人がうつになるリスクの評価や、個別の患者に最適な治療法の開発につながる可能性があるとしている。(c)AFP