【1月26日 AFP】乳がんの一般的な治療薬タモキシフェンは、肺がんによる死亡リスクの軽減にも効果があるとする論文が24日、医学誌「Cancer」に掲載された。

 タモキシフェンは、エストロゲンの作用を阻害する抗エストロゲン剤。これまでの研究では、更年期の女性がエストロゲンを増やすためにホルモン補充療法を受けると、肺がんによる死亡リスクが増加することが示されている。

 では、エストロゲンを阻害すると肺がんによる死亡リスクも減るのではないか。スイスの研究者らは、ジュネーブがん登録(Geneva Cancer Registry)のデータをもとに、1980~2003年に乳がんと診断された女性6655人のうち、2007年12月までに肺がんを発症した人数と肺がんで死亡した人数を調べた。

 なお、全体の46%にあたる3066人が、抗エストロゲン剤の投与を受けていた。

 肺がんによる死亡率は、抗エストロゲン剤を投与されたグループが投与されなかったグループを87%も下回った。肺がん発症率については目立った相違はなかった。

 研究者は、「肺がんはホルモンの影響を受けるという仮定を支持する結果だ。肺がんのかなりの部分にエストロゲンとプロゲステロンの受容体が存在していることも明らかになっている」と話す。
 
 今後の研究でも同様の結果が得られ、抗エストロゲン物質が肺がんの転帰を改善することが確かめられた場合、臨床段階に移行する可能性は大きいと、期待が持たれている。(c)AFP