【1月6日 AFP】米医療用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)は3日、米国の医療機関と協力して従来の生体検査に代わるがんの血液検査手法の改善に取り組むと発表した。がん治療に大きな革新をもたらす可能性があるという。

 これは循環腫瘍細胞(Circulating Tumor CellCTC 腫瘍からはがれ、血中を循環するごくわずかながん細胞)を検出する技術で、数年前に米マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)の医師らが開発し、がんの診断を革新する検査方式と評価されてきた。開発に携わる研究者の間では「液体生検」とも呼ばれている。

 しかし、これまではがん細胞の数を把握することしかできず、患者の体内でがんがどのようになっているのかをおおまかに理解するためにしか役立っていなかった。

■たった1個の血中がん細胞も捕捉

 ジョンソン・エンド・ジョンソンの腫瘍研究部門、ORD(Ortho Biotech Oncology Research and Development)副社長のニコラス・ドラコポリ(Nicholas Dracopoli)氏は、「この新しい技術で、単にがん細胞の数を数えるだけでなく、分子レベルの変化を調べて細胞内で起きている病状の進行を把握できるようになる」と語った。

「新技術を使えば、患者の負担が大きい生体検査をせずに、1回の採血で数十億個の血中細胞の中から1個のがん細胞を発見することができる。こうして捉えたがん細胞の分子解析を行うことによって、患者に合う治療法があるか判断できる。外科的にサンプルを取る現在の生体検査では、腫瘍の状態をリアルタイムで把握するのは不可能だが、これが可能になる」と、ドラコポリ氏はAFPに語った。

 ORDや研究者のほか、米国に初期のCTC検査を導入したベリデックス(Veridex)も加わって技術の改善に取り組む。

 米食品医薬品局(US Food and Drug AdministrationFDA)はすでに、転移性、あるいは進行した乳がん、前立腺がん、結腸直腸がんについてCTC検査を承認している。ドラコポリ氏は、これ以外のがんの発見や治療でもCTC検査の有効性を証明するFDAの臨床試験には3~5年かかるとの見通しを示した。(c)AFP/Kerry Sheridan