【12月20日 AFP】130種類以上の脳疾患の進行に重要な役割を果たすタンパク質の一群を特定したとの論文が、米科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)」に掲載された。

 これらのタンパク質群は、アルツハイマー病やパーキンソン病など多数の脳疾患との関連性だけでなく、人間行動の発達にも驚くほどの関連性があることが分かったという。

■シナプスの中の「PSD」

 人間の脳は無数の神経細胞が入り組んだ迷宮を形成しており、化学物質や電流がシナプスと呼ばれる神経細胞間の部位を流れることで情報を伝達している。

 シナプスの中では、複数のタンパク質が組み合わさって「シナプス後肥厚部(PSD)」と呼ばれる部位が形成されている。

 このPSDが、シナプスの機能を阻害し脳疾患や行動変化をもたらすとされてきた。

■多数の脳疾患や認知行動に関連

 英ウェルカムトラスト・サンガー研究所(Wellcome Trust Sanger Institute)のセス・グラント(Seth Grant)氏率いる研究チームは、脳手術中の患者のシナプスからPSDを取り出して分析した。

 グラント氏によると、分析の結果、予想をはるかに超える130種類以上の脳疾患がPSDと関連していることを突き止めた。また、神経変性疾患の他にも、てんかんや、小児期に発達する自閉症などとの関連性も明らかになったという。

 グラント氏は「人間のPSDは広範な疾患の中心となっている」と述べた。研究の成果は、診断方法の向上など、新たな治療方法の確立につながることが期待される。

 また、予想外の収穫として、PSDに含まれるタンパク質が、学習や記憶などの認知行動のほか、感情や気分の発達に深く関与し、間接的な役割を果たしていることもわかったという。(c)AFP