【11月14日 AFP】カナダ・マクマスター大(McMaster University)の研究チームが7日の英科学誌ネイチャー(Nature)に、人間の皮膚細胞から血液細胞の前段階である細胞を作る方法を見つけたと発表した。がん治療などへの応用が期待される。

 ヒトの胚性幹細胞を使用することについては賛否があるが、今回の手法はそうした議論のある方法を避けられる上、胚性幹細胞を使うより簡単な処理で済むという。

 研究チームはヒトの皮膚から採取した細胞を、遺伝的に適合する「血液前駆細胞」(血液細胞になる直前の細胞)に変えた。自分の皮膚から血液を作ることができれば、献血に頼らず輸血用の血液を供給できるようになる。また長期の抗がん剤治療で、現在は体調回復のために必要な休薬期間をおくことなく治療を続けられるようになるかもしれない。

 胚性幹細胞を使用する手法には飛躍的な進歩が期待できる一方、腫瘍ができるなどのリスクも存在した。しかし今回の方法ならば、そうした問題を避けながら、3×4センチ四方程度の成人の皮膚から輸血に十分な量の血液を作ることができるという。

 研究に加わったマクマスター大のジョン・ケルトン(John Kelton)健康科学部長は「完全に適合する骨髄提供者が見つからないために手術ができないという状況を解消するかもしれない。医療界全体、特に骨髄移植患者とその家族にとって朗報だ」と述べた。

 この研究はカナダ保健研究機構(Canadian Institutes of Health Research)など4機関の資金で行われた。臨床試験は2012年にも始められる可能性がある。研究チームはさらに皮膚の細胞を使って血液以外の細胞の作成にも取り組むという。(c)AFP(c)AFP/Kerry Sheridan