【9月6日 AFP】米国で、遺伝子組み換え技術を用いて通常の2倍のスピードで成長するよう改良したサケが、一般市民の食卓に上る可能性が出てきた。

 このサケは、マサチューセッツ(Massachusetts)州のアクアバウンティ・テクノロジーズ(AquaBounty Technologies)が開発したもので、タイセイヨウサケ(アトランティック・サーモン)に成長の早いキングサーモンの成長ホルモン遺伝子を組み込んでいる。「アクアドバンテージ(AquAdvantage)」と名付けられた。

 米食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)は19日から2日間、公聴会を開いて生産販売の認可の是非を審議する。米国では過去に遺伝子組み替えヤギの乳を用いた血栓予防剤の製造が認可された例はあるが、遺伝子組み換えサケが認可されれば、食用の動生物類への遺伝子組み替え技術の使用が承認される初めての例となる。

■「天然サケ保護できる」と主張

 アクアバウンティ社によると、この遺伝子組み換えサケは通常のタイセイヨウサケに比べ、市場サイズに成長するまでの期間が半分に短縮できた。その他の特徴や成分などは「一般的なタイセイヨウサケと全く変わらない」という。

 同社は、サケ需要の高まりに対応することと天然サケの乱獲防止の両方への貢献が期待できると説明。海水魚を内陸の淡水施設で養殖する際に起こりがちな病気などの問題も防げるとして、「安全で持続可能な食料供給を確実にする上で強力な柱となる技術だ」と認可への自信を見せている。

■安全や生態系への影響に懸念

 だが、環境保護団体や食料安全啓発団体は、遺伝子組み換えサケを認可すれば他の食肉・魚類についても遺伝子組み換えへの道を開くことになり、健康面や環境へのリスクからも容認できないと強く反対している。

 また、養殖される遺伝子組み換えサケが水槽から逃げ出し天然サケと交雑した場合、在来種の保全をおびやかすなど生態系に悪影響を及ぼすとの批判もある。

 FDAは公聴会を前に実施したリスク調査で、養殖サケが逃げ出し野生化する可能性は「極めて低い」とし、遺伝子組み換えサケが「自然環境に著しい影響を及ぼすことはほとんどない」と結論付けている。(c)AFP/ Rob Lever

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