【9月1日 AFP】英ケンブリッジ大学(Cambridge University)の研究チームが、ヒトの皮膚細胞から作った幹細胞を肝細胞に成長させることに成功した。肝硬変や肝臓がんで障害を起こした肝臓の修復への応用が期待されている。医学誌「Journal of Clinical Investigation」に25日発表された。

 チームは異なる遺伝性肝疾患をもつ7人と、健康な3人の計10人の皮膚から生検標本を採取しそれぞれを「再プログラム」して、どんな組織にも発達しうる幹細胞に変えた。

 これらの疾患にかかっている肝臓と、健康な肝臓の細胞を増殖させることができれば、異常細胞で何が起きるかを特定できるとともに、新しい治療法の効果も実験できる。

 こうした遺伝子操作は、患者1人1人に特化した治療法へとつながる道を開く。研究を重ねていけば、肝臓以外の臓器への応用も考えられる。

 ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)研究については8月23日、米国の裁判所が連邦予算の助成解禁に仮差し止め命令を出すなど、現在も議論が続いている。しかし科学者の間では、どんな組織にも発達しうるES細胞の研究は不可欠だという考えが多い。

 報告の主筆者であるケンブリッジ大のタミル・ラシド(Tamir Rashid)氏もまた「例えば肝臓など、ドナー臓器が不足している状況では、移植以外の方法の開発が緊急課題だ。今回の研究は新たな治療法という意味でも、細胞療法の発展という意味からも有意義だ」と述べている。(c)AFP