【8月12日 AFP】死に至ることもある遺伝性皮膚疾患「劣性栄養障害型表皮水疱症(RDEB)」を患う子どもの皮膚の修復治療に、骨髄幹細胞を初めて用い、効果を得たとする論文が11日、米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に発表された。

 表皮水疱症は、軽い接触や刺激で皮膚に水疱ができ、皮膚がむけ落ちる病気で、現在も根本的な治療法がない。口内や食道にも発症し、食事の際に痛みを伴うこともある。RDEBでは皮膚がんを併発することも多く、幼少時に死亡しなくても20~30代までしか生きられない場合が少なくない。

 米ミネソタ大学(University of Minnesota)のジョン・ワグナー(John Wagner)、ヤコブ・トロル(Jakub Tolar)両医学博士率いる日米英などの国際研究チームは2007~09年、RDEBを患った15か月~14歳の子ども6人を対象に、化学療法と骨髄幹細胞移植による治療を行った。骨髄幹細胞を、骨髄の病気や損傷以外の治療に使うのは世界で初めてという。

 治療開始から30日後、130日後にそれぞれ経過を観察したところ、皮膚の回復速度が上がったことが6人全員に確認された。うち4人は皮膚を保護するための包帯の使用量を減らすことができた。

 また、すべての子どものコラーゲン7濃度が上がっていることが確認できた。コラーゲン7は皮膚層同士や皮膚と体をくっつける「接着剤」の役目を果たすもので、RDEBを患う子どもに欠乏している。

 治療を受けた子どものうち1人は移植から183日で死亡したが、残る5人は799日後にも生存していた。

 ワグナー医師は、まだ子どもたちの回復状況や皮膚の強さを観察している段階だとしながらも、健康なドナーからの骨髄移植によってコラーゲン7濃度が上がり、皮膚の耐性が向上して、RDEBの改善につながると結論づけ、「今回の発見で骨髄移植の適用範囲が広がるとともに、疾病治療における幹細胞移植の有効性を示す例になる」と述べている。(c)AFP