【6月23日 AFP】ゴロゴロと鳴り響く雷と雨の中、モハメド・ラビウ(Mohammed Rabiu)さんは、最近死んだ2人の子どもたちの墓の前で祈りを捧げる。ナイジェリア北西部で発生した鉛汚染で子どもたちは死亡した。

 ラビウさんの周囲には、真新しい子どもたちの墓が70基並ぶ。一夫多妻のラビウさんは、村最大のこの墓地を頻繁に訪れ、13か月の息子と19か月の娘の冥福を祈っている。

 ラビウさんは違法な金採掘に手を染めた。その代償は高く付いた。農業や牧畜で生計を立てる貧しい村人たちの多くが、収入の足しにしようと金採掘に携わっていた。

 村の長老、ハルナ・ムサ(Haruna Musa)さんは、泥壁の家の外に設けたトタンぶきの屋根のバルコニーに座り、「最初はマラリアだと思っていた。しかし病にかかる人の数がどんどん増え続けた」と語った。

 ザンファラ(Zamfara)州の辺境にあるこの村では、過去数か月の間に、5歳未満の子どもが100人以上死亡した。ふるいにかけて金を取り出すために親が家に持ち帰った鉱石に、高濃度の鉛が含まれていたためだった。

■それでも金採掘を行う理由

 伝統的な農業よりも実入りが良いため、多くの村人たちが20年にわたって違法な金採掘を行ってきた。ラビウさんも13年間金採掘に携わってきたが、子どもを失った今も、金の採掘をやめるつもりは無いという。

 この地方の主要穀物のアワが50キログラムで6000ナイラ(約3600円)であるのに対し、金商は、金1グラムを3500ナイラ(約2100円)で買ってくれる。

 ムサさんも、「たった数時間の仕事で1グラムの金は手に入るが、アワを1袋分つくるためには雨期まるまる(約3か月)かかる」と語る。

 米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and PreventionCDC)は今月初め、鉛中毒が、その重傷度や犠牲者数、環境汚染などの面からみて、前代未聞の規模に広がっていると述べた。環境汚染の除去作業もすでに開始されている。(c)AFP/Aminu Abubakar