【5月5日 AFP】生後まもない赤ちゃんを揺することで神経に回復不可能な損傷を与えてしまう「揺さぶられっ子症候群」(Shaken Baby SyndromeSBS)の症例が、米国で07年の不況突入以降に急増していたことが、4つの病院による報告で明らかになった。

 揺さぶられっ子症候群は「虐待が疑われる乳幼児頭部外傷(abusive head traumaAHT)」とも呼ばれる。

 2004年1月1日から09年末までの6年間に記録されたデータを分析したところ、512件のSBSの症例が見つかった。うち16%の乳幼児が死亡していた。

 月ごとに詳しく分析したところ、07年12月1日を境にそれまで月平均6.0件だった症例が、その後の不況期には9.2件に急増していた。対象となった6年間の中で症例が最も少なかったのは05年の66件、最多は08年の121例と倍近い差があった。

 研究者らは前週末カナダ・バンクーバー(Vancouver)で開かれた小児学会会議で「現在の不況期の始まり以降、SBSの発生率が増えたことが示されている」と報告した。

 報告書ではあくまで「失業率と揺さぶられっ子症候群の増え方には生態的関係はない」と断りながらも、結果からはその関係性がうかがえるため、経済情勢の悪いときには予防措置を取る必要性があるだろうと指摘している。

 今回の調査は、米ペンシルベニア(Pennsylvania)州のピッツバーグ小児病院(Children's Hospital of Pittsburgh)の医師が07年後期以降の症例増加に驚き、ワシントン(Washington)州シアトル(Seattle)、オハイオ(Ohio)州のシンシナティ(Cincinnati)およびコロンバス(Columbus)にある主要な3つの小児医療施設と協力して行った。

 米国揺さぶられっ子症候群センター(National Center on Shaken Baby SyndromeNCSBS)によると、同症候群の症例は米国で年間1200~1400件あり、うち約25%の乳幼児が死亡している。また生存できた75%の乳幼児でもその8割に障害が残っている。(c)AFP