【3月29日 AFP】過食によって肥満になる人の脳内の分子経路が、麻薬中毒者のものと同じだとするラットによる実証研究が、28日の米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス(Nature Neuroscience)電子版に発表された。

 米フロリダ(Florida)州のスクリプス研究所(Scripps Research Institute)のポール・ケネディ(Paul Kenny)准教授の研究チームは、脳内の報酬系の過剰刺激が快楽物質の中毒状態を引き起こすとの仮説を裏付ける実験結果だとしている。

 研究チームはまず、ラットにベーコンやソーセージ、チーズケーキなどの高脂肪、高カロリーのえさを与え、劇的に太らせた。この「ジャンクフード」ラットは、通常のえさを与えられていたラットの2倍のカロリーを摂取するようになり、電気ショックを与えてもえさを食べることを止めず、食欲のコントロールができなくなってしまった。

■D2受容体の活動低下がカギ

 肥満ラットが中毒的な行動を示したことを確認した後、研究チームはこのラットの脳内で何が起きているのかを調べた。研究チームは、セックスや食事、麻薬摂取などの快楽的な経験によって放出される神経伝達物質ドーパミンを受け取る、いわゆる「ドーパミン2(D2)受容体」に注目した。

 これまでの研究では、コカイン中毒者の脳内ではドーパミンが大量に放出され、D2受容体が過剰に刺激されていることが明らかになっている。

 過剰な刺激を受けた体は、D2受容体の活動を低下させて適応しようとする。この結果、脳内で快楽物質が摂取される「報酬反応」が徐々に悪化していく。コカイン中毒者の場合、報酬の無い状態を避けるためコカインの刺激をより頻繁に必要とするようになる。

 研究チームは今回、麻薬中毒者のD2受容体で起こる変化と同様の変化を、「食事中毒」ラットで確認した。

 研究結果については今後ヒトでの実証が必要となるが、前年10月の学会で初期段階の報告がされた際には、肥満の人々からは「甘いものや高脂肪の食べ物に夢中になるのは一種の中毒だ」との自分たちの主張を裏づけるものだとして多くの賛同を得ている。(c)AFP