【2月23日 AFP】高齢者になると昼間に必要で、若いときには足りないとドラッグにも走りかねないものとは?――答えは睡眠。米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の年次総会では、睡眠に関するさまざまな新発見が発表された。

■夜中の目覚め、脳の働き悪化するのは若者

 カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California San DiegoUCSD)の研究では、平均年齢68歳の高齢者と、平均27歳の若年者の2グループの睡眠と記憶の関係を比較した。結果、高齢者では睡眠時間が長いほど記憶が維持され、若年者では睡眠時間あたりの眠りの深さ、つまり睡眠効率が記憶のパフォーマンスを左右した。
 
 研究を率いた同大のショーン・ドラモンド(Sean Drummond)教授(精神医学)によると、年を取るとともにこの睡眠効率が下がり、「入眠後覚醒」のないぐっすりした眠りはまれになり、「真夜中に起きたり、途中で何度も起きたりする」。こうした睡眠パターンでも、高齢者だと翌日の脳の働きには影響が出ないが、若年者では明らかに鈍くなるという。

■1時間半の昼寝は1晩分の効果

 また同大精神医学部サラ・メドニック(Sara Mednick)氏は、昼寝の目覚しい効果を報告した。

 昼寝と夜間の睡眠効果を視覚学習効果などを比較して調べたところ、1時間半の昼寝は、1晩分の睡眠に等しい効果を示した。

■ダブルエスプレッソよりも20分の昼寝

 しかし日中、昼寝のぜいたくを味わえる人はそういまい。コーヒーを飲んで、カフェインで眠気を飛ばそうとする人のほうが多いはずだ。ところが濃いダブルエスプレッソを飲んでも、20分の昼寝の効果にはかなわないのだという。

 感覚情報に基づく知覚に関する記憶ではカフェインも昼寝同様の記憶効果を発揮するが、海馬で処理され意識的な操作が可能な記憶、例えば単語や電話番号、名前を覚えたりといった顕在記憶は、カフェインを摂取するとかえって悪くなるという。

■10代のドラッグ使用、7時間睡眠でライン

 もうひとつの興味深い発表が、実際に医療と公衆衛生の分野で問題になっている10代の睡眠障害と薬物使用の相互関係の研究だ。

 1日あたりの睡眠時間が7時間以下の10代の若者は、よりドラッグに手を出しやすいうえ、まわりの友人や兄弟にも睡眠不足とドラッグ使用が広がりやすいという観察が報告された。

 UCSDとハーバード大学(Harvard University)の共同研究によると、7時間以下しか睡眠時間を取っていない10代では、同じく7時間以下しか睡眠していない友人がいる確率が、そうでない10代に比べて11%高かった。また大麻の使用では、7時間以下睡眠のグループのほうが19%多かった。

 米睡眠財団(US National Sleep Foundation)が勧める睡眠時間は10代では8.5時間以上、成人では少なくとも7時間以上だ。(c)AFP/Karin Zeitvogel