ダウン症治療に効果か、神経伝達物質ノルエピネフリンの増加 米研究
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【11月19日 AFP】神経伝達物質ノルエピネフリンを増やすことがダウン症患者の回復に役立つ可能性があるという研究結果が、18日の米科学誌「Science Translational Medicine」に発表された。
論文は、「初期に介入すれば、ダウン症児の情報を収集・調整する能力を手助けすることができるだろう。理論的には、ダウン症児の認知機能を改善することにつながる可能性がある」としている。
米スタンフォード大学医学部(Stanford University School of Medicine)と米ルシール・パッカード子供病院(Lucile Packard Children's Hospital)の研究チームは、ダウン症患者に極めて近い症状をもったマウスで、ノルエピネフリンの前駆物質を使用して学習障害を回復させる実験を行った。
ノルエピネフリン系に焦点をあてたダウン症治療研究は、今回が初めてだという。
■マウスの実験
実験では、第16染色体の染色体断片を3本持つマウスを使用した。ヒトのダウン症は、体の各細胞が第21染色体を通常の2本ではなく3本持った場合に出現する。
ダウン症の子どもは本研究で使用されたマウスのように、文脈認識と記憶障害を患う。
研究によると、ダウン症児は発達遅延ではないものの、年をとるうちに空間情報や文脈情報を利用して新しい記憶を形成することが困難になり、同年代の子どもたちから後れをとるようになる。こうした機能をつかさどっているのが、脳内の海馬だという。
通常は、文脈記憶が形成される際、海馬ニューロンは脳内の別の部分にある青斑核のニューロンからノルエピネフリンを受け取る。だが、ダウン症に似た症状を持つマウスでは、青斑核は生涯の早い段階で退化し始めることが分かった。
青斑核が衰えると、マウスは、別のケージに入れた場合には巣を作らないといった、環境の変化に対する認識が必要とされる簡単な認識力テストに合格できなくなった。正常なマウスは通常、新しい環境に置かれても巣を作る。しかし、マウスにノルエピネフリン前駆物質を投与すると、ノルエピネフリン前駆物質は脳内で主要な神経伝達物質とホルモンに変換され、学習障害は治った。
論文は、「ノルエピネフリンに変換される薬、またはノルエピネフリンを模倣してノルエピネフリン受容体に結合する薬を使用しても、同じ効果を得ることができる」としている。
■ノルエピネフリンの可能性
うつや注意欠陥多動性障害(ADHD)などの神経系障害の治療薬も、ノルエピネフリン系をターゲットにしている。今回のダウン症研究で使用されたノルエピネフリン前駆物質は現在、線維筋痛の治療薬として、臨床試験が行われている。(c)AFP
論文は、「初期に介入すれば、ダウン症児の情報を収集・調整する能力を手助けすることができるだろう。理論的には、ダウン症児の認知機能を改善することにつながる可能性がある」としている。
米スタンフォード大学医学部(Stanford University School of Medicine)と米ルシール・パッカード子供病院(Lucile Packard Children's Hospital)の研究チームは、ダウン症患者に極めて近い症状をもったマウスで、ノルエピネフリンの前駆物質を使用して学習障害を回復させる実験を行った。
ノルエピネフリン系に焦点をあてたダウン症治療研究は、今回が初めてだという。
■マウスの実験
実験では、第16染色体の染色体断片を3本持つマウスを使用した。ヒトのダウン症は、体の各細胞が第21染色体を通常の2本ではなく3本持った場合に出現する。
ダウン症の子どもは本研究で使用されたマウスのように、文脈認識と記憶障害を患う。
研究によると、ダウン症児は発達遅延ではないものの、年をとるうちに空間情報や文脈情報を利用して新しい記憶を形成することが困難になり、同年代の子どもたちから後れをとるようになる。こうした機能をつかさどっているのが、脳内の海馬だという。
通常は、文脈記憶が形成される際、海馬ニューロンは脳内の別の部分にある青斑核のニューロンからノルエピネフリンを受け取る。だが、ダウン症に似た症状を持つマウスでは、青斑核は生涯の早い段階で退化し始めることが分かった。
青斑核が衰えると、マウスは、別のケージに入れた場合には巣を作らないといった、環境の変化に対する認識が必要とされる簡単な認識力テストに合格できなくなった。正常なマウスは通常、新しい環境に置かれても巣を作る。しかし、マウスにノルエピネフリン前駆物質を投与すると、ノルエピネフリン前駆物質は脳内で主要な神経伝達物質とホルモンに変換され、学習障害は治った。
論文は、「ノルエピネフリンに変換される薬、またはノルエピネフリンを模倣してノルエピネフリン受容体に結合する薬を使用しても、同じ効果を得ることができる」としている。
■ノルエピネフリンの可能性
うつや注意欠陥多動性障害(ADHD)などの神経系障害の治療薬も、ノルエピネフリン系をターゲットにしている。今回のダウン症研究で使用されたノルエピネフリン前駆物質は現在、線維筋痛の治療薬として、臨床試験が行われている。(c)AFP