【11月19日 AFP】抗生物質の過度な使用により、抗生物質に耐性のある細菌が欧州のみならず世界中で増加し、死者が出る、高額な医療費がかかるといった事態を招いている。このような報告が18日、スウェーデンのストックホルム(Stockholm)で開かれた専門家会議で発表された。

 欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and ControlECDC)主催の欧州抗生物質啓蒙(けいもう)デー(European Antibiotics Awareness Day)に出席した専門家らは、超耐性菌の出現により、世界の保健の根幹が脅かされていると警告した。

 この件を担当するECDCの専門家はAFPに対し、「すべての治療に対する耐性を持つ細菌が出現し、われわれは古い毒性のある抗生物質を使うか、書類上でしか知らない薬剤を組み合わせて使うことを強いられている」と語った。
 
 別の専門家は、「効力を持つ抗生物質がなければ、手術、移植、集中治療といった現代医学の治療が不可能になる」と指摘する。

■世界に拡大する超耐性菌

 ECDCはこのような状況は、抗生物質の使用量が他地域に比べて多い南欧や東欧で特に深刻だと強調した。

 ECDCの推計によると、欧州連合(EU)加盟国内で年間約2万5000人が耐性菌により死亡しており、これは自動車事故での死者数の半数以上にあたる。

 また、超耐性菌の出現により、欧州では年間15億ユーロ(約2000億円)の費用がかかり、うち9億3000万ユーロ(約1240億円)は病院が負担している。

 さらに、超耐性菌の影響を受けているのは欧州だけではないという。公式統計によると、米国では超耐性菌により数万人が死亡している。抗生物質がより手に入りやすく、処方せんすら必要のないこともある貧困国では状況はさらに悪いと専門家らはみている。

 イタリア、スペイン、ポルトガルなど欧州9か国では、2003年にはわずか2%だった大腸菌感染率が前年、25%を超えた。大腸菌は最もよく知られた耐性菌だ。(c)AFP/Marc Preel