【10月6日 AFP】米国で臨床試験段階にあるコカイン中毒者の治療用ワクチンについて、コカイン使用量を減らす効果が確認できたとする米エール大学(Yale University)医学部と米ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine)の研究結果が5日、医学誌「Archives of General Psychiatry」の10月号に掲載された。米国内に160万人存在すると言われる薬物依存症の患者にとって、有効な治療法となる可能性があるという。

 両大学の研究チームによると、コカイン・ワクチンは血中の抗コカイン抗体の濃度を高め、コカインが脳内に達するまでにコカインを不活性化する。このため、患者は十分な高揚感を得られず、最終的にコカインの使用量を減らすことができるという。

 このワクチンは、ベイラー医科大学のトーマス・コステン(Thomas Kosten)教授が15年前から開発に取り組んでいるもので、動物実験を重ねたのち、数年前から臨床試験が行われている。完成した試薬は、欧州で販売される予定だ。

 ただし、6か月間の臨床試験では、コカインによる高揚感を大幅に抑制できるレベルの抗体が体内で作られた患者は、全体の38%にとどまり、抗体が作られた患者でも効果は2か月間しか維持されなかった。

 このため研究チームは、治療では、適切な抗体レベルを維持するためにワクチンを繰り返し摂取する必要があるかもしれないとしている。

 米国では、コカイン中毒に対する薬理学的に承認された治療法が確立されていないため、現在は精神医学的な治療が主流となっている。(c)AFP