【9月14日 AFP】がん患者がうつ症状を併発していた場合、致死率が25~35%高まるとの研究が14日、医学誌「キャンサー(Cancer)」に掲載された。

 カナダのブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)のジリアン・サティン(Jillian Satin)研究生とウォルフガング・リンデン(Wolfgang Linden)教授らのチームは、過去の26の研究結果をもとに、がん患者9417人について、がんの進行度と致死率に対するうつ病の影響に関するメタ分析を行った。

 すると、うつ症状が見られる患者の致死率は、精神状態が健康な患者に比べ25%、軽度または重度のうつと診断された患者では39%も高くなることが分かった。

 サティン氏は、がんを宣告された患者が死を予測する可能性が高いことを指摘し、「うつの影響は常に注視する必要がある」と指摘。研究成果によって、かん患者のメンタルケアが一般的ながん治療に取り入れられるようになればと話した。

 ただし、今回の調査結果はうつとがん致死率との関連性を示唆している一方で、「うつ自体が致死率を高めると証明されたわけではない」と注意を喚起。39%という数字の高さを特定の患者の病状に結びつけるようなことはすべきでなく、「人びとは具体的な数値を知りたがるが、こうした数値は間違った認識につながりかねない」と懸念を示した。

「調査結果が示唆することは、がんと診断された患者が宣告後に示したうつ症状によって、がんの進行度が予測できるという点だ」

 今回の調査は、一般的にも専門医の間でも広く信じられている「患者の精神状態ががんの進行に影響する」との認識が実証されているかを確認することが目的。その結果、精神腫瘍学の分野では患者の85%、専門医の71.4%が、心理的な要因ががんの病状に影響すると確信していたという。

 サティン氏らは、過去に心疾患とうつが致死率に同影響するかについて調べた研究があることも指摘。この研究では、冠状動脈性心疾患の患者がうつを発症した場合、致死率が2倍に高まるとの研究結果が出ているという。(c)AFP