【9月7日 AFP】アルツハイマー型認知症の誘因と考えられる3つの遺伝子変異を英仏の2つの研究チームが発見し、6日付の科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」にそれぞれ発表した。診断ツールとして、また発症リスクの高い人の生活設計を補助する上で有益とみられる。また、欠陥遺伝子に作用する新薬の開発も期待される。

 認知症の最大の原因であるアルツハイマー病には強い遺伝性があると考えられているが、原因遺伝子の詳細や発症の仕組みはほとんど解明されていない。

 若年期に発症する家族性アルツハイマー病については、これまでに3つの原因遺伝子が確認されたが、家族制は全アルツハイマー病患者の3%にも満たない。一方、60歳以降で発症する一般的なアルツハイマー病で特定されている原因遺伝子は、1993年に発見された「APOE4」のみだ。

■記憶形成に関わる遺伝子などを特定

 今回、英、米、仏、独、アイルランド、ベルギー、ギリシャの大学の研究者による共同研究チームと、フランスの国立保健医学研究所(Institut National de la Sante et de la Recherche MedicaleINSERM)の研究チームとは、計3万6000人のDNAを調べ、アルツハイマー病患者に見られる3つの遺伝子変異を新たに特定した。このうち、CLUとCR1は脳内のアミロイド班を除去する働きを持つ遺伝子とみられ、これらが変異することによって脳内に有害物質が蓄積され、アルツハイマー病の誘因となると研究チームは考えている。

 もう1つの新遺伝子PICALMは、神経細胞間でシグナルを伝達するシナプスの活動に重要な脳内化学物質を制御し、記憶の形成などの脳の機能をを補助する役割を果たしている。

 英研究チームに資金援助している英NGO「アルツハイマー・リサーチ・トラスト(Alzheimer's Research Trust)」のレベッカ・ウッド(Rebecca Wood)代表は、「新遺伝子の発見は、認知症の研究にとって大きな飛躍だ」とアルツハイマー病の解明に期待を示した。(c)AFP