米国初のネット中毒リハビリ支援施設がオープン、「ネット断ち」で社会性回復目指す
このニュースをシェア
【8月22日 AFP】米国初となるインターネット中毒者の依存リハビリ支援施設「リスタート(reStart)」が7月にオープンした。この施設では、オンラインゲームにはまってしまった若者たちなどを積極的に受け入れている。
リスタートは、心理療法師のヒラリー・キャッシュ(Hilarie Cash)氏とセラピストのコゼット・レイ(Cosette Rae)氏がワシントン州(Washington)の田舎にある5エーカーの敷地に開設した、住み込みのリハビリ施設だ。
ネット中毒者の依存習慣を断ち切れるよう、ここにはインターネットに関するものは一切おいていない。「施設に入所している間、ゲームをすることは1分たりとも許可されません。ゲーマーにとってゲームをすることは麻薬患者がドラッグを使用するのと同じだからです」と、キャッシュ氏は話す。ネット中毒者のインターネット使用を断つことで、その人の脳を正常な状態に戻し、現実の世界との前向き結びつきを取り戻す手助けをするのだという。
リスタートの施設には6人を収容できる。45日間の滞在費として1万4500ドル(約138万円)かかり、このほか山中でキャンプするための道具一式のレンタル費などの経費も加わる。
■社会生活に深刻な悪影響をもたらすネット中毒
過去数十年の間にインターネットなどのテクノロジーが生活の中に浸透するにつれて、ネット中毒やゲーム中毒は大きな社会問題となってきていると、キャッシュ氏は指摘する。
問題は次第に深刻化している。幼い頃からテクノロジーに囲まれて育つ子どもたちが増え、オンラインゲームなどを長時間やり続けた場合、精神の発達がアンバランスになるという。
成長過程で起きる悩みや問題から逃れたいと思っている子どもたちにとって、安全なゲームの世界は両親公認の「避難場所」となる。プレーヤーを夢中にさせるゲームは、苦しんだり傷つくこともある現実社会に対する抵抗力を失わせてしまうのだ。キャッシュ氏によると、パソコンやテレビゲームに長時間没頭する子どもたちは、成長してから社会的に適応できない大人になる可能性があるという。
■リハビリプログラムで社会性を回復
この施設に入所した患者たちは「リスタート・インターネット中毒回復プログラム(reStart Internet Addiction Recovery Program)」を受ける。ネット中毒者のリハビリプログラムは、アルコール依存者や薬物損者のためのプログラムと同様、12段階だ。
リハビリ・プログラムでは、会話を始めるスキルや体の仕草から相手の気持ちを読み取る方法なども教える。典型的なネットゲーム中毒者の場合、入浴や料理、火事一般、などの日常生活活動から訓練し直す必要がある。ソーシャルスキルが欠落して自信が持てない人がゲーマーの特徴だと、キャッシュ氏は説明する。
「リスタート」の患者第1号は世界的に人気のオンラインゲーム「ワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft、WoW)」シリーズにのめり込んでいた19歳の少年だ。この施設で子ヤギにほ乳瓶でミルクを与えたり、ニワトリの小屋を作ったりする活動に励んでいる。
この少年は動物への愛情を理解するようになり、施設で飼われている子犬や子ヤギ、ニワトリの世話をしている。キャッシュ氏によると、とても元気でソーシャルスキルも著しく改善され「出会う若い女性と上手につきあえるようになった」という。(c)AFP/Glenn Chapman