【7月31日 AFP】外国での安楽死を望んでいる難病の女性が、夫の付き添いや介助が認められるかどうかの判断を求めた裁判で、英最高裁にあたる上院上訴委員会は30日、夫を自殺ほう助罪で訴追するには検察が訴追要件を明確化する必要があるとの判断を下した。判断を受け、検察は9月末までに指針を示し、来年早々をめどに法整備を進める方針だ。

 英国では1961年に制定された自殺法によって、自殺ほう助および教唆には最大で懲役14年が科せられる。難病の多発性硬化症で電動車いすでの生活を余儀なくされているデビー・パーディ(Debbie Purdy)さん(46)は、病状が悪化しているが、現行法のもとで尊厳死を選ぶ場合、事前にスイスなど安楽死が合法化されている外国に行く必要があった。また、夫のキューバ人バイオリニスト、オマール・プエンテ(Omar Puente)さんは自殺ほう助罪で有罪となる可能性があった。

 パーディさんは下級審の控訴院で2月に敗訴し、上訴していた。

 5人の上院上訴委員は全会一致で、公訴局長 (Director of Public ProsecutionsDPP)が法的位置づけを明確にし、特別な法律を制定する必要があると判断。「すべての人には自分の人生を尊重する権利があり、パーディさんが死に至る時をどのように過ごすかは、彼女の人生の一部だ。パーディさんは尊厳のない、苦悩に満ちた死を避けたいと望んでおり、それは尊重されなければならない」と述べた。

 パーディさんは今回下された判断について、「自分の人生を取り戻せたように思う」と喜びを語った。一方、一部の人権団体からは、障害者や難病の人に与える影響を懸念する声も上がっている。

 英国ではこれまでに100人以上が、スイスのチューリヒ(Zurich)近郊にある自殺ほう助を行う病院で死を迎えている。付き添った家族などが帰国後に訴追されたことは過去一度もない。(c)AFP