【7月19日 AFP】ブランディ・ハメル(Brandy Hummel)さん(26)はポーチに座り、お腹を優しくなでる。中で元気に動いている双子の赤ちゃんをなだめるためだ。だが、この赤ちゃんたちはハメルさんの子どもではない。

 ハメルさんは6か月前、400キロ離れたニューヨーク(New York)市郊外に暮らすある夫婦の代理母になることに同意する契約をかわした。その後、体外授精で妊娠したのがこの赤ちゃんたちだ。

   子宮を「貸し出す」ことで女性が報酬を得る代理母出産は、米国内ではニューヨークを含む複数の州で禁止されている。だが、ペンシルベニア(Pennsylvania)州は代理母出産を認めている。

■代理母の需要が増加

 この出産契約を手掛けたのはニュージャージー(New Jersey)州の弁護士、メリッサ・ブリスマン(Melissa Brisman)氏。ブリスマン氏の事務所では過去13年間に毎年150件以上の代理母出産契約を取り扱ってきた。全米では推定で年間6000件ほどに達するはずだが、この数は代理母の需要の高まりにより近年激増していると、同氏はみている。同性愛者のカップルと代理母出産が違法とされている国の夫婦が、代理母に頼るケースが増えているためだ。

 さらに、米人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)』で知られる女優サラ・ジェシカ・パーカー(Sarah Jessica Parker)さんが代理母出産で双子の女の子を授かったことも、こうした傾向に拍車をかけている。

■「お金のためではない」

 ハメルさんが出産する双子の赤ちゃんの生物学的な母親はディナ・フェイベルソン(Dina Feivelson)さん。ガンを克服した後、夫のニール(Neil)さんとの間に子どもを授かりたいと願ったが、命に危険があるとしてドクターストップがかかった。そこで代理母を雇うことに決めたという。

 フェイベルソン夫妻は、医療費やその他の諸経費のほか、体外受精期間中から毎月2100ドル(約20万円)をハメルさんに支払っている。

 だが、ハメルさんは「お金のためではない」と言う。代理母出産に関わる多くの人が、他者の幸せを願う考え方こそが、代理母出産を支えていると指摘する。

■出産後に問題が発生する場合も

 代理母が出産後に赤ちゃんの引き渡しを拒否し、トラブルになる場合もある。このためブリスマン氏のような斡旋業者は代理母の選定に際して身体面だけでなく心理面でも入念な審査を行う。

 ブリスマン氏の事務所には毎週50-100人から代理母の応募がある。そのうち10-20人と面接し、最終的には5-6人が代理母に決まる。「(この事務所で手がけたケースで)代理母が子どもの引き渡しを嫌がったことは、これまで一度もない」とブリスマン氏は話す。

 通常、代理母の母親としての権利は妊娠中になくなるため、代理母出産を依頼したカップルが生まれた赤ちゃんを引き取ることができない場合でも、そのカップルが指定した後見人が赤ちゃんを保護することになる。

 代理母出産の契約内容としては、流産や、赤ちゃんに影響を与える可能性があるその他の問題が生じた場合、あるいは代理母に予定外の治療が必要になった場合にどう対処すべきかが記載されるが、その内容は代理母が暮らす州や個々のケースに応じて異なる。

 上述のケースでは、フェイベルソン夫妻が写真と手紙で双子の赤ちゃんが育つ様子をハメルさんと夫のマーク(Mark)さんに連絡することになっている。

   「ハメルさんとの間にはとてもよい仕事上の関係ができています。私は彼女が自分の身体を危険にさらしていることに敬意を払い、彼女は双子が私たち夫婦の子どもであることを認めてくれています」(ディナさん)

(c)AFP