【5月18日 AFP】新型インフルエンザ対策としてエジプトでブタが殺処理されている件に関連し、インターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」に投稿されたビデオ映像の残酷な殺処理方法に、猛抗議する声が殺到している。

 ビデオを投稿したのは、エジプトの独立系新聞アルマスリ・アルヨウム(Al-Masri Al-Yom)。鉄の棒で打ちのめされるブタや、次々に刺される子ブタ、また生きたままブルドーザーのシャベル部分に蹴り落とされるブタたちなどが撮影されていた。

 このビデオは先週末にユーチューブで公開されて以来、戦慄を覚えたイスラム教徒やキリスト教系のコプト教徒らの猛反発を招いている。コプト教会の信徒らはエジプトの養豚業界を担っており、またイスラム教徒らはブタ肉を食べない。殺処理が開始される前、エジプト国内には約25万頭がいたと推測される。

  新型インフルエンザA型(H1N1)の感染はこれまでのところ、エジプトでは確認されていないが、同国は世界で唯一、ブタの殺処理を決定した国となっている。しかし、世界保健機関(WHO)は、ブタの殺処理は科学的に正当性がないと指摘している。

 ビデオの中では首都カイロ(Cair)に近いKashkusの副市長が、ブタが詰め込まれた貨物トラックに上から化学薬品を流し込み、ゆっくりとブタたちが死んでいった様子を説明もしている。ブタの死骸が埋められた投棄場の責任者は「ブタには化学物質がかかっていた。死ぬまで30~40分放置されていた」と証言した。

 しかし、農業相は化学薬品でブタを殺処理した点は否定している。また感染症対策担当局の責任者サベル・アブデル・アジズ・ガラル(Saber Abdel Aziz Galal)氏は「かけたのは消毒のための殺菌剤だ。埋める前にブタののどをかき切った」とAFPに反論した。AFPが独自に入手した写真では、ブタは開腹されていたがのどは切られていなかった。

 カイロ・アズハル大学(Al-Azhar University)のイスラム教のファトワ(宗教令)委員会を率いるサリム・モハメド・サリム(Salim Mohammed Salim)師はAFPに、こうした方法で動物を殺害することは「イスラム教では厳しく禁じられている。その動物がブタであっても、なにであっても」と語った。(c)AFP/Alain Navarro