【5月14日 AFP】今世紀最大の健康への脅威は気候変動であり、引き起こされる洪水やかんばつ、海面の上昇などにより疾病や栄養不良、住居を失うリスクを増幅すると14日、英国の医師らが警鐘を鳴らした。

 「21世紀最大の健康への脅威は気候変動」と明言したのは、英医学専門誌「ランセット(The Lancet)」とロンドン大学 ユニバーシティー・カレッジ(University College London)が1年あまりかけて編さんした報告で「(影響を)最低限に見積もっても非常に憂慮すべき事態で、行動を要する」と指摘した。

 医師らによる同報告の編さん委員会は、ノーベル平和賞の受賞歴もある国連の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」が2007年に発表した画期的な第4次報告書(Fourth Assessment Report)から多くのデータを引用し、天候パターンが変化すると、疾病を媒介する蚊の生息域が広がり、以前は寒冷地だった場所にまでマラリアやデング熱をもたらしかねないことや、貧困国で洪水が起これば、コレラなど水を媒介とする疾病の伝染に拍車をかけることなどが挙げている。

 また、気候変動の健康への間接的な影響として、不作による栄養不良や暴風雨による負傷者や死者が現れ、湿地状態のデルタ地帯や社会不安から逃れようとする人々の移動によって、健康リスクへの脆(ぜい)弱性が増すとも警告した。「下痢や栄養不良など、気候の状態を敏感に反映したリスクが多少増えるだけで、疾病による負担全体は著しく増加することが見込まれる」という。

 最も大きな被害を受けるのは地球温暖化に関する責任が最も少ない貧困国たちで、「これについて何も取り組みがなされないとすれば、われわれの世代にとって歴史的に残る恥の源となるだろう」と報告は結んでいる。(c)AFP