【4月20日 AFP】結合双生児の分離手術の執刀で知られシンガポール人医師が今年予定しているインド人姉妹の分離手術に対し、コー・ブンワン(Khaw Boon Wan)シンガポール保健相が警告を発した。20日の現地英字紙ストレーツ・タイムズ(Straits Times)が発言を報じた。

 この双生児はインドのアンドラプラデシュ(Andhra Pradesh)州出身の5歳の姉妹、バニ(Vani)ちゃんとビーナ(Veena)ちゃんで、頭部で結合している。

 シンガポールの神経外科医キース・ゴー(Keith Goh)医師によると、アンドラプラデシュ州政府から同医師に分離手術の依頼があった。手術の実施は今年後半に予定されている。

 しかし、コー保健相は「自然の状態を変えることは、むしろ害になることもある」と述べ、状況によっては結合双生児の分離はしないほうが良いとの考えを示した。また、1人を救うために、もう1人を生かさないことを医師が選択しなければならない場合もあると述べ、「2人とも生存したとしても脳に障害が残ることも多い。どれほどの生活の質が望めるだろう」と分離手術に疑問を呈した。

 ゴー医師は2001年に、生後11か月だったネパール人の双生児、ガンガ・シュレスタ(Ganga Shrestha)ちゃんとジャムナ・シュレスタ(Jamuna Shrestha)ちゃんの97時間に及ぶ分離手術を執刀した。

 頭骨が融合していた2人は手術によって分離されたが、ガンガちゃんは脳障害が残った。ジャムナちゃんは歩けず、また頭蓋骨には穴が開いたままで、皮膚1層で保護されているだけの状態となった。ガンガちゃんは08年、肺炎と髄膜炎の治療を受けていたネパールの首都カトマンズ(Kathmandu)の病院で呼吸器障害により死亡した。
 
 ゴー医師は、頭部で結合した29歳のイラン人の双生児姉妹、ラレ・ビジャニ(Laleh Bijani)さんとラダン・ビジャニ(Ladan Bijani)さんの分離手術も執刀したが、2003年7月に行われた52時間のこの手術では、2人とも出血多量で死亡するという悲劇的な結末となった。(c)AFP