【3月3日 AFP】現代の病院に院内感染という悪夢をもたらす「スーバーバグ(薬物耐性を持つ細菌)」のメカニズムを解明したとする論文が、1日の英科学誌「ネイチャー(Nature)」で発表された。

 クロストリジウム・ディフィシレ(C-diff)は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)と並んで院内感染の主要な原因菌となっており、毎年多くの死者を出している。

 C-diffは胞子または硬い殻状の被覆をまとったバクテリアで構成されている。通常は内臓に寄生するが、腸内細菌により監視されているため、健康な人には問題がない。

 だが、病気になって抗生物質が投与された場合、抗生物質は「善玉」のバクテリアを死滅させ、監視の目がなくなったC-diffは自由に増殖することになる。

 このとき、C-diffは毒物を排出するため、患者は重度の下痢を起こし、死に至る場合もある。大腸炎を発症することもあり、その場合は大腸を切除する必要が生じるケースもある。

 ロヨラ大学によると、米国では毎年約50万件の感染症例が確認されており、うち1万5000人から2万人が死亡している。

 1日の「ネイチャー」には、C-diffにより排出される2種類の毒物について20年間研究してきた米ロヨラ大学(Loyola University)の研究チームが、大きなダメージを与えているのはこのうちの一方であることを突き止めたとする研究結果が掲載された。  

 研究チームは現在、この2種類の毒物の変異体を作製し、ハムスターで実験を行っている。

 また、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)の研究チームはX線結晶学を用いて、初めてC-diffの被覆の高解像度画像を作成した。

 この研究は分子微生物学の専門誌「Molecular Microbiology」の最新号に掲載されているが、被覆を破って内部のバクテリアを不能にする薬を理論的には開発できるとあり、重要な意義を持っている。(c)AFP