【1月11日 AFP】2003年の米国主導のイラク侵攻とその後の暴力や混乱は、流血、死、破壊だけではなく、多くの人びとの心に深い傷を残した。

 現在、ベルリン(Berlin)にある拷問被害者のための治療センター「BZFO」では、心理学の専門家らがウェブ上で治療を行っている。性的暴行や拉致などの被害に遭った人びとにとって、ソファに座ってのカウンセリングよりも、非人格的なウェブの方が心を開きやすい場合も多い。

 この無料サービス「インテラピー(Interapy)」は2008年春、過去に心的外傷後ストレス症候群(PTSD)の治療を受けた約20人と、治療中の約30人を対象に始まった。

 BZFOによると、これまでに約250人が参加し、イラク人を中心にスーダン、シリア、パレスチナ自治区の人びともいるという。このような人びとは、性的暴行、拉致、拘束中の虐待などの被害を受けたりバラバラ死体を見てしまったりしたのだという。

■3段階の治療方法

 治療方法は3段階に分かれている。第1段階では、被害者が自らのトラウマ(心的外傷)と「向き合う」ために、被害を受けている最中に考えたこと、見たこと、感じたことを4通の電子メールに書いてもらう。だが、この段階が最も難しく、辛い体験を思い出した時点でその先に進めなくなる患者も多いという。

 第2段階では、自分と同じトラウマを受けたとする想像上の友人に4通の電子メールを送る。これにより、犠牲者が感じることが多い罪の意識を振り払うことができる。

 最後に、さらに2通の電子メールを書くよう勧められる。1通は自分あてに、もう1通は「あなたはもはやわたしの人生に関与しない」とでもいうように、加害者に対して送る。

 理論的にはこの治療は5週間で完了するはずだが、実際には4-6か月を要することが多いという。

■批判あるも「何もないよりはいい」

 一方、この手法に対する批判もある。ドイツ西部エッセン(Essen)の心的外傷の専門家は、「インテラピー」は患者を安定させることはできても、専門家と被害者の対面カウンセリングに取って代わるものではないと指摘する一方で、「何の助けもないよりは、イラクの人びとにとってインテラピーは明らかに役に立つ」と述べた。(c)AFP/Jan Doerner